第34話 どうしてこうなった……
――パシャッ! パシャッ!
シャッターを切るカメラの音が部屋中に響く。
そして、私に向けられたカメラのフラッシュで目を刺激された。
「ちょっと~! ハズレっち、目を瞑っちゃダメじゃない!」
「うっす」
「次はしっかり頼むわよ~! それじゃ、……ハーイ笑ってぇ!」
――パシャッ! パシャッ!
再び、連続して私とエマの写真を撮りまくる音が響く。
「エマっち、もう少しニッコリ笑って! ハズレっちも表情硬いわよ! もっと柔らか~く笑って!」
私とエマはどういうわけか撮影スタジオに居る。
そして、これまたどういうわけか、そこで写真撮影なんぞをされているのであった。
「ちょっと~! ハズレっち集中してる⁈ それじゃいつまでも終われないわよ!」
「うぃーっす……」
カメラマンをしてる筋骨隆々なオジサンは、何度も私たちに注意してきやがる。
集中させたいならその見た目とはアンマッチ過ぎる喋り方と奇抜な服装を何とかしろよ……。
カメラマンをするオジサンは、魔法少女みたいなキャピキャピした服に身を包んでいた。
逞しい肉体にコスチュームがはち切れんばかりだ。
女の子が着ていたって痛々しい服なのに、あの人が着るともう犯罪的だ。
あれで外を歩いてたら公然わいせつ罪になるだろう。
どうやってスタジオまで辿り着きやがったんだ変態オヤジめ!
「エマっち良いわね! そのぎこちない感じの笑顔、最高よ!」
隣を見れば、ぎこちないどころかエマの表情は死んでいた。
昔、薬でラリッた親父がこんな顔をしていただろうか……。
可哀そうだから私の妹分にこんな顔をさせないで欲しい。
そんなことを考えていれば、矛先は私に向いた。
「オイ! ハズレ! テメェはいつまで手間取らせる気だぁ⁈ 内臓ぶちまけられてぇか⁉」
いつまでも表情が決まらない私にカメラマンがぶち切れた。
先ほどまでの気色悪い猫撫で声を捨てて、ドスの利いた声で恫喝してくる。
怒りと共に隆起する筋肉で奴の魔法少女コスチュームが遂に突き破られていた。
「さ、さーせん……」
「悪いと思ってんならさっさと笑いなぁ」
破れたコスチュームの隙間からは筋ものの入れ墨が垣間見えている。
魔法少女と龍の入れ墨、やっぱり全てが噛み合わないんだよな……。
口答えできるはずもない私は素直に返事をするしかない。
「うっす……」
私は無理やり顔を笑顔の形に引き攣らせる。
早くこの地獄から解放されたい。
「エマ、早く終わらせような……」
「……ん」
本当に、どうしてこんなことになってしまったのか。
その話をするには一週間前、極東ヒカゲの初配信をした翌日に時を遡る。
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