第33話 極東ヒカゲ。よろしく⑤
どうして万単位の人間に見守られる中で愛してるゲームなんぞをせにゃならんのか……。
「なぁ、これ本当にやるのか?」
コメント欄:
『これを見に来た』
『やってください』
『あくしろ』
『照れた姉御が見たい』
『エマちゃんの圧勝とみた』
………………………………
正気かよコイツら……。
私とエマが「愛してる♡」とか言い合ってるのを見て楽しいのか?
ちなみに、私が見る側だったら結構楽しそう。
恥ずかしそうにしてるエマとか想像しただけで撫でまわしたくなる。
「ハァアアア……。しゃーない、やるか。ヒカゲ、覚悟はいいな?」
若干ソワソワしているエマ。
そんな態度を取られるとこっちも変に緊張しそうだ。
「……ん」
エマの控えめな返事を合図に、私は先手を打った。
「あ~、……んんっ。……ヒカゲ、愛してる♡」
今世最高のメス声を披露してやったわチクショウめ!
「………………っ」
目の前には、過去最高に口角を釣り上げたエマが居る。
お前、そんなに笑えたんだ……。
そんな事を考えて油断していたのが良くなかった――。
「……お姉ちゃん、愛してる♡」
エマからビッグバン級の反撃があった。
ニコニコ満面笑顔での『愛してる』。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
あまりにも破壊力が高すぎです。
私、如月ハズレは昇天いたしました。
――これにて完!
「はっ…………!」
危ない、また転生してしまうところだった!
意識を取り戻すとそこには不満気な顔のエマが居た。
「…………もう 1回」
「いやいや、待て! もういいだろ! お前らも満足したよなぁ⁈」
コメント欄:
『いや、これは流石に早すぎる』
『せめてもう 1回』
『カッコいい姉御を見せてくれ』
『あれじゃゲームになってない』
『姉御ざっこ……』
『先手後手入れ替えは必要でしょう』
………………………………
ダメだ、私の味方が居ない。
管制室の方を見れば、さらに私を後押しするテロップが出ていた。
『もう 1回やったら減刑する』
テロップを出す矢崎はニコニコだ。
どんだけ見たいんだよ!
「くっ……。分かった、ならもう 1回だ…………」
何でこんな公衆の面前で黒歴史をリアルタイム更新させられているのか。
しかも、管制室からヤクザに見守られながら……。
私は訳の分からない状況に苦しみながら、エマに開始の合図を出す。
「来い、エマ!」
「………………ん」
こっくりと頷くと、エマは溜を作って一言を発する。
「結婚しよ♡」
愛してるゲームをやれよ……。
こうして、第 2回戦はエマの反則負けとなり、最終企画は終了した。
「お前ら、今日は色々あったが、これでようやく終わりだ。いろいろあり過ぎてマジで疲れた。んで、私からは特になし。以上!」
コメント欄:
『100時間配信より声が疲れてないかw』
『おつかれ姉御』
『これからスタッフにこってり絞られるんだね……』
『お疲れさまでした』
『おつミネ』
………………………………
「ヒカゲ、最後に自分で配信を締めろ」
「……ん…………おつかれ……またね」
そんな簡素過ぎるエマの挨拶を最後に極東ヒカゲの初配信は幕を閉じた。
配信終了時点のチャンネル登録者数―― 9万人。
これにて一件落着、とはならない。
この配信を境に、私の日常は混沌を極めることになるのだった――。
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