第25話 メスガキ①
やはり私は天才だと思うんだ。
エマが声を出さないなら、メッセージを打たせればいいじゃない!
つい最近、矢崎が私に買い与えてくれた新しい携帯。
こいつを使えば私とエマの端末でメッセージをやり取りできる。
「ほーらエマちゃん、メッセージアプリですよぉ! これでハズレお姉ちゃんと声無しでも会話できまちゅよー!」
新たな可能性に胸を膨らませ、テンションが多少バグっている私はエマに怠絡みしていた。
だって、エマとの会話が楽しみすぎる。
「…………」
エマからは何も言わないけれど、大層機嫌の悪そうな顔をしていらっしゃる。
いや、殆ど表情筋が死んでるエマの本心なんてわからないけど。
しかし、最近は何となく変化の少ない顔からでも、エマの感情の起伏が分かるような分からないような……。
なんにしても、これで妹分とようやっと会話ができる。
丸投げされたエマVTuber化計画の足掛かりが遂に……!
しかし、文字で会話するならメッセージアプリなんぞ使わなくても、今までも紙とペンで交流できたのでは?
そんな疑問も浮かんで来たが、過ぎ去った日々の可能性は握りつぶす。
今はこれから先の事を考えようじゃないか。
まずは私からメッセージを送る。
『エマ、なんか言ってみて』
果たしてどんなメッセージが返ってくるだろうかと思って、胸を躍らせる私。
しかし、私の期待を他所にエマは余りにも通常運転だった。
『ん』
画面上には無情にも一文字だけが映し出される。
『エマちゃん?』
『ん』
『エマ……?』
『ん』
……………………。
「舐めてんのかテメェエエエ!」
「………………ん」
コイツ、マジでなんなの⁉
リアルで喋れなくてもネット弁慶くらいにはなれるだろうと思ったら、リアルより酷い!
顔が見えない分で、メッセージだと更に個性が薄くなってるわ!
「そんなに私と話したくないか⁈」
「んっ」
「即答するなぁああああ! 普通に悲しくなるだろうがっ!」
どうにもなんねぇよこれ! だってすっげー面倒臭そうな顔してるもん!
エマ本人に現状を改善しようという意思が全くねぇよ!
「なぁ、エマさんよぉ!
「…………」
――ピロンッ!
真顔のエマから新しいメッセージが届いている。
どうにも返答が早かった。
「どーせまたお得意の『ん』だろぉが!」
そんことを言って携帯画面を見ると、そこには衝撃の文字列が――。
『ざっこ〜♡』
――――。
――――――――。
――――――――――――は?
届いたメッセージを脳が処理するのに数十秒掛かる。
お前の最初のセリフ、本当にそれでいいのかよ……。
エマは、ネット弁慶ならぬネットメスガキだったらしい。
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