第20話 反省会①

 エマとベッドで横に並び、極東ミネネでエゴサーチをしていると部屋の扉が開かれた。

 人様の家へ上がり込むのにノックもしないとは、とんだ不逞だ。

 いや、人様の家の一室を占拠してる私が不逞なのか?


「オウ、家主が来たぞ! テメェら好調か?」


 ヤクザの爺があらわれた!

 楽しそうにコチラを見ているぞ!


 声を掛ける

▶無視する

 

「エマ、この企画どうだった? 結構自信あったんだけど」


 私は矢崎を無視してエマに話しかける。

 もちろん、エマから返事は無いが小首を傾げているから評価はイマイチといったところだろうか。

 ちなみに全く自信のなかったヤケクソ歌配信を見ているときのエマは、若干楽しそうな雰囲気を出していた。

 歌で勝負できるとは思わないけれど、たまにやる分にはウケが良いのかもしれない。今後の選択肢として一考の余地ありだ。問題は私の羞恥心が刺激されることだろうか。


「オイ、無視するなハズレ。流石に怒るぜ?」

「うるせぇなぁ。こっちは疲れてんだよ」

「お前、随分と態度がデカくなったな……。ちと馴染み過ぎじゃねぇか…………?」


 矢崎は私の態度に随分と呆れている。

 だが、関係ないね!

 私は矢崎から最初に言い渡されていたチャンネル登録者 1万人という目標値を自らレイズし、その上で達成してみせたのだ。

 もう奴は私を簡単に切り捨てることはできない。今後は対等の立場として、私も相応の態度を示させていただく。


「いつまでもエマの携帯を使わせるんじゃ悪いと思って、ハズレ専用の端末も用意しようかと検討してたんだが…………。必要なさそうだな」

「どなたかと思えば矢崎様ではございませんか! いやぁ、失礼いたしましたっ! ついさっき起きたところでして、私、寝ぼけていたみたいです!」

「「…………」」


 矢崎のみならずエマからも蔑むような視線を向けられる。

 しかし、その程度で私のメンタルは崩れない。

 強者に胡麻を擦ることに関しては一家言あるんだ。

 私を舐めるんじゃねぇ!


「ハァ……。もういい、ちょいと移動するぞ」



 てっきり、私は配信室に移動するものと思っていたのだが、辿り着いたのはいつか訪れた事務所の一室。

 私は高そうなソファーに腰掛けていた。


「いやぁ、初めてここに連行されたときが懐かしいっすわ」

「まだ二週間とそこらしか経ってねぇけどな。ふんぞり返りやがって、偉くなったもんだ」

「私、天才ですから」

「皮肉が効かねぇ奴だ……」


 さて、冗談はこのぐらいにしないと手痛い仕置きがありそうだ。

 私は姿勢を正して意識を切り替える。


「まあ、そうありたいって話ですがね。それで矢崎さん、本日はどういったご用件ですか?」


 態々こんな部屋に連れてくるんだ。長話になるんだろう。

 

「へっ、良い気位だ……。今日は、初配信の反省会をして貰おうと思ってな。葛西と田村も来る。少し待て」


 なにやら引っかかるニヤケ面で矢崎はそう語った。

 どうにも嫌な予感がする。

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