第18話 極東ミネネが来たぞ!⑥

 『新人VTuber極東ミネネ、初配信で100時間ライブを決行』


 こんにちは、こんばんは。

 極東ミネネです。


 配信を始めて90時間ほどでしょうか。

 ネットニュースになってました。


 コメント欄:

 『遂にニュースになってしまったか』

 『10万人おめでとう』

 『おまえ有名人じゃんwww』

 『凄いことになってきたな』

 『ミネネちゃん凄い!』

 ………………………………


 おかげさまで更に勢いを増してチャンネル登録者は目標の10万に到達。

 残り10時間はプラスアルファの獲得を目指すのみとなった。


「……っ…………ぐすっ…………。お前ら、……ありがとな……正直、見てもらえるか不安だったから……」


 体力的にも精神的にも限界だった私は、涙腺が簡単に崩壊した。

 そりゃあもう、みっともなくボロ泣きしている。

 気持ち的には40代でやっている私としては、恥ずかしいことこの上ない。

 

 しかし、視聴者たちには口が悪いけど努力家の女の子が胸の内を明かしたような感動シーンに見えたらしい。


 コメント欄:

 『やばい、俺も泣きそう』

 『凄い頑張ってたもんな』

 『最後まで付いていくからな』

 『アーカイブもちゃんと見るわ』

 『めっちゃ良い子じゃん。荒い口調と性格のギャップで好きになりそう』

 『初日から応援してるから貰い泣きしそう』

 『その涙、ペロペロしていい?』

 ………………………………


 一部変な輩も混じっているけれど、視聴者たちに馬鹿受けしてしまった。

 初配信の勢いは留まるところを知らない。

 


 そして、オーラス。

  100時間配信最後の企画は、振り返り雑談。

 これまでの長かった道のりを視聴者たちと語り合う。

 最後の一時間、それまでの疲れが吹き飛んだように私は元気になっていた。

 終わりが見えると、こうも精神的に楽になるものかと自分でも驚いている。

 

「いやー本当に良かった。実は、途中で気を失ったら、あらゆる手を使ってスタッフに起こしてもらう約束だったんだよな。最悪、自分で指を折るか爪を剥がすつもりだった! あっはっは!」


 気持ちが楽になったせいだろうか、私の口はゆるゆるになっていた。

 

 コメント欄:

 『え……流石にそれは…………』

 『冗談……?』

 『コイツはやるぞ』

 『草も生えん』

 『やっぱイカれてんだ』

 『姉御、怖いっす』

 『全然笑えないが?』

 ………………………………


 少し前までの感動ムードが一転、視聴者たちは私にドン引きしていた。

 なんでだよ!


 そんなこんなで、私の初配信は無事にエンディングを迎える。


「私を見つけてくれた皆、本当にありがとうな! これから全力で活動するから、私に付いて来てくれ!」

 

 配信終了直前のチャンネル登録者数、12万人。

 初配信の最高視聴者数、 1万人。


「VTuber界に、極東ミネネが来たぞ!」


 私のそんな一言で 、100時間に及ぶ初配信は幕を下ろした。

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