第18話


「本当にここなんですか…?」


日暮の街を俺は三人の冒険者風の男たちと走る。


彼らの仲間がこの近くで怪我をして俺の治癒魔法が必要らしい。


怪我人を放っておくことは出来ないと俺は受付嬢さんたちの誘いを断って三人について行ったのだが、三人はどんどん妙な方向へ走っていく。


三人は怪我人がどうやって怪我をしたのか、何があったのかという俺の質問に答えずに無言で走り続け、俺は違和感を覚えながらも彼らについていった。


そしてとうとう俺を先導して走っていた三人が足を止めた。


そこは人気のない路地裏だった。


昼間でも薄暗いだろうに、現在は日暮のため真っ暗で視界が不明瞭だ。


俺は周囲を見渡して怪我人を探すのだが、そのような人物はどこにも見当たらない。


不思議に思っていると、背後で剣を鞘から抜くような音がした。


振り返ると、俺をここまで連れてきた三人が、武器を構えている。


「えーっと…怪我人は?」


「「「…」」」


三人は無言でニヤニヤと笑っている。


どうやら俺は騙されたらしい。


ここまできてようやく俺はそう気付かされた。


「こ、これはどう言うことです…?」


「叫んでも無駄だぜ?俺たちの仲間が人ばらいは済ませてある」


「ああ、どこにも逃げ場はない」


「え…?え…?」


混乱する俺。


三人が武器を構えたままどんどん近づいてくる。


「悪いがあんたには消えてもらう」


「あんたが存在すると困る人がいるんだ」


「この街に……腕のいい治癒術師は二人もいらないんだ」


「…治癒術師。あ…」


三人の言葉を聞いて俺はなんとなく察してしまった。


まさか例の神官様とやらが俺を消すために…?


俺がいると自分が治癒魔法で儲からなくなるから…?


「ちょ、ちょっと待ってください!俺の話をっ…」


「悪いな、死ね」


「死ね…!!」


「殺せぇええええ!!!」


三人が武器を持って飛びかかってくる。


俺は咄嗟に屈んで三人の攻撃を避ける。


ブォン!


ヒュン!!


ヒュッ!!!


「…っ」


三人は俺を捉えようと剣を振り回し、なりふり構わず襲いかかってくる。


俺は暗くて視界が明瞭でない中、なんとか気配だけで三人の攻撃を避けていた。


…どうしてこんなことが出来るのか自分でもわからない。


けれどなぜか手に取るように三人の攻撃の軌道がわかる気がした。


そして考えるよりも先に、体が勝手に動いて回避行動を取るのだ。


「こいつっ」


「ちょこまかとっ」


「くそ、逃すな!!!」


三人で一斉に襲いかかっているにも関わらず、なかなか俺を捉えられずに焦りだす三人。


俺は三人の攻撃を避けながら、少しずつ路地裏の出口の方へ移動して逃走経路を模索する。


と、その時だった。


「おい大丈夫か!」


「…!?」


声が響いた。


路地裏の入り口の方に人影が見える。


「そこで何をしている!?私の命の恩人に何をする気だ!?」


「イレーナさん!?」


そこに立っていたのはかつてマテウスの奴隷だった獣人の女性、イレーナだった。


姿を見たのはあの日以来だった。


今の彼女は、あの時のようにやつれた様子はなく、軽装備を見に身に纏って戦闘職っぽい格好だった。


「どうしてここに!?」


「そいつらはお前の仲間なのか!?それとも敵なのか!?」


「え!?」


「助けが必要なのかどうか聞いているんだ!」


「うおっ!?」


しゃがむ。


頭上を、剣の刃が通過する。


「て、敵です!突然襲われたんです!助けてくださいっ」


俺は必死にそう叫んでいた。


「わかった。まかせろ」


イレーナは短くそういった次の瞬間、地面を蹴った。


「…っ!?はやっ…!?」


そして目にも止まらぬ一瞬のうちにこちらまで接近し、背後の三人に躍りかかっていった。

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