3.〝禍時〟の戦い
11.〝劫末音義〟
忘れ去られた神々が大挙し、恐怖により信仰心を取り戻す為、暴虐の限りを尽くす。そんな〝
とは言え全
日暮れまであと五分。計画的ゴーストタウンとなった町で、飛び入り参加枠の
「迎撃組は少数精鋭って相場で決まってるが、でも二人だけなんて初めて見たぜ」
同一二名枠の一人である
「ああ、確か少ない地域でも、二桁下回る事はまず無いんだっけ」
残り一枠の私が補足した。
「うちは事情が特殊ですから。
積雪で白くなった海岸に立つ私達は、水平線に向かい横隊になっている。
この町は三方は平地へ、残り一方は海に続く形をしていて、往来を遮るものに乏しく守りが難しい。他の地域より防御へ人手を割く必要がある手間があるのは事実だが、迎撃組が私と
視線を左へやり、
停電前に充電を満タンにしておいたものだ。〝
「すげー。充電式のメガホンとかあんのか」
「普通にネットで買ったわよ? 先生が学校で使ってるのも充電式じゃなかった?」
「こんな近くでちゃんと見た事
「あー。確かに拡声器使ってる時の先生って大抵遠くにいるから、まじまじと見る機会無いかも」
水平線辺りの海上でどこからともなく集まって来た神が群を成し始めているのが見えていないのかと思う程緊張感が無い。あの生物なのか非生物なのかよく分からんキモい姿をした奴らがグチャグチャに固まってる様に何も覚えないのだろうか。
一般
「そろそろ来ます。警戒を」
「
目の位置を変えずに返す。
「今して貰っても構いませんが。早いに越した事はありません」
「それだとお前の声が聞こえなくなるしぃ」
おどけた声音で返って来た。
「そうですね。その程度の遮音性では、
「こら
「冗談ですよ。特注の耳栓ですから」
日々の暮らしの中で騒音トラブルという言葉がありふれているように、音のコントロールとは難しいからだ。どれだけ気を遣っても環境次第で漏れてしまうし、その漏れた音がどんな大きさや形でどこまで広がり、誰の耳に拾われるかなんて分からない。そんなものに絶対的な命令を下す意味を付けて扱うのだから、意図せず知らない誰かを操ってしまう恐れなんて幾らでもある。途方も無く強力という点ではチートだが、そもそも
涼しい顔をしているが
それが上手くいかない頃は、殆ど口を利かないのに、泣いてばかりの子だった。私はそれを見るのが嫌で
私に人並みの暮らしは要らない。そんなありふれたものを渇望しながら、生涯手にする事は困難だろう人が側にいるのに、何が恋だの青春だ。他者の苦痛から目を逸らしてまで謳歌しなければならないのが人生なら、そんなもの
……何をそんなにイライラしてるんだ、私。
やたら感情的になっている。溜め息を吐くのを堪えながら自分を俯瞰して、近付いて来る神の群れから目を離さず背中の荷物を下ろした。今朝商店街で使っていたものと同じ木刀袋とその中身。
気味の悪い毛糸の塊のように纏まりながら接近する神々が、拡声器の音が届く範囲へ入って来た。奴らがごうごうと風を切る音が、ゴーストタウンと化したこちらまで鳴り渡る。
天地は
それでも
それでも
「共喰いしながら溺死しろ」
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