10.チョーク食わすぞ。
立ちっ放しだったイケイケ女子グループ(お前らとは今話したくないし座れよ)の一人が挙手して答える。
「
「それは今日の未明の出来事です」
「でもまず
「とか言うんだよ皆。俺はそんな事
「今足蹴にされてた記憶もう飛んでるんですかあなた」
チョーク食わすぞ。
「でもフラれるってどうして? まだ
「あの個人的な問題を勝手にクラス共有しないで貰えます?」
無視された。
「キモ」への報復らしい。
成り行きでクラス代表の発言者みたいになって来たイケイケ女子グループ(今一番話したくない相手なんだけれど)が答える。
「だって
「ノリが悪いツケが回って来たわね」
「役目を全うしているだけです」
「事情は分かりました。ただこの件は私と
「相談するのはあり?」
「無し」
いや、別にいいか。別に相談って一般的な行為だし。
「いえ、いいですよ。先程のように見世物にしないのなら」
「俺としてはそんなつもりでは無かったんだけれど」
何言ってんだこの馬鹿野郎。
そう口にしようと
「知らない土地で自分に興味持って貰うには、兎に角大勢の目に触れるしか
息が止まる。
そうだこいつ、今朝この町に来たばかりだった。たった一人で、家に押し付けられた人生を歩む為に。それまで暮らしてた土地での友達とか、生活も置いてけぼりにして。その迷いも悩みも無い筈が無かった決断を、寸前で覆してここにいる。私に一目惚れして、私を振り向かせる為に。
強烈な同情と混乱を覚えた。つい、それらに突き動かされるまま口にする。
「……何で私なんかの為にそこまで出来るんだよ」
心臓が跳ねた。
初恋なんて甘い理由じゃない。誰だって急に視線を投げられれば驚くし、私は知り合ってから
己を振り回す運命に疲れ果て、私に恋という勘違いをしている男。
なのに
まだ瞬きをしない
「大昔に俺の生き方を決めた女だ。この機を逃して、誰かの女にでもなったら耐えられねえ」
遊びは終わりだとチャイムが鳴る。
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