08.……最近あんまり会ってないし、もうちょっと一緒にいたかったけれど。
逆に光栄だけどな。家の繫栄だの体面だのの為に計略
「
「ぼ、僕はこの町の
「まあね。怯えて逃げてもみっともないだけで済むわ。でも仕方無いわよね。
おいおいそんな盛大に煽ったら
「このっ……。調子に乗るなよ、失態を誤魔化す為に雇ってるだけのくせに!」
既に
私達以外の誰かが雪を蹴り飛ばす音が鳴る。
人目に触れるのはまずいと思った
「お兄ちゃん」
うちの高校の制服を着た少年が立っていた。雪の白と静けさに馴染む落ち着いた雰囲気が滲み、縁の厚い眼鏡をかけている。
まだ私が
お兄ちゃんは、
「たまには早起きしてみるもんだな。桜に雪って、中々贅沢な景色じゃないか。ついはしゃいじゃったよ」
お兄ちゃんは肩を竦めながら、足元で蹴り飛ばされた雪を目で示した。おどけた態度につい緊張が緩む。
この状況を長引かせると不利になると察した
「また後で会おう」
「嫌よ」
張り詰めていた空気が緩む。堪えていた溜め息を
「
「配下を侮辱されて社交辞令で済ます主がいますか」
つんとそっぽを向いて返される。どうやら咎めようとしている意図が見えていたらしい。かと言って看過も出来ず口にする。
「気持ちは嬉しいですがやり過ぎです。攻撃してくれと言ってるようなものですよ」
「喧嘩を売って来たのは向こうよ。それにねえ
全くもってその通りそうなんだけれど、かと言って荒事にすれば物事とは何だって悪化するのも事実な訳であって。兎に角
「まあまあそう言わずに」
「〝
頭にぽんと何かを置かれる。見上げると、苦笑しながら私の頭に手を置いているお兄ちゃんと目が合った。
お兄ちゃんは小さくなっていく
「いつまでいるんだろうなあ。あいつ。まさかこのまま卒業までいる気なんだろうか」
私もつられて、角を曲がって見えなくなっていく
「手土産も無しに帰れないんじゃない。プライド高そうだし」
去年この町にやって来た時も、しっかり〝
「ま、なるようになるさ。愚痴ならいつでも話しに来ればいい。
お兄ちゃんはそう私達に笑いかけると、さっさと歩き出してしまった。
……最近あんまり会ってないし、もうちょっと一緒にいたかったけれど。最後に会ったのはこの前の、おじいちゃんとおばあちゃんの七回忌以来だし。
って言ったら、流石にウザいだろうか。もうお互い高校生だし。
お兄ちゃんを目で追っていると、
「行きましょう。遅刻するわ」
普通に歩いていては追い付けない距離までお兄ちゃんが遠ざかってから、
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