07.「そうよ。恋しろ」「雑な命令やめて下さい」
「何で駄目なんですかそれこそ自由恋愛でしょう」
頭の隅では「嫌だ」と即答してしまったのはきっと、恋愛により親友の今まで知らなかった生々しい部分を見たくないから。
「いや別に
「昼ドラなんて皆終わってますよ」
「まあね。何で昼間っから他人の生殖活動を最悪な形で見せ付けられなきゃならないのかしら」
その顔に似合わないえぐい言い回しも最悪の形してる。
黙っていても箱入り娘と分かる立ち振る舞いをしてるのに、喋ると箱から投げ捨てられた蓮っ葉になる。
幾ら親友相手だから無遠慮になってるとは言えそんなえっぐい言葉遣いする奴の恋愛、マジで見たくなくて距離置くかもしれない。
「いやあの……。昼ドラにはなりませんから。もし
「今馬鹿馬鹿しいって言った?」
「言ってないです」
「口にしてたわよ今」
「えっ、嘘」
「ホント。ていうか、昨日の態度から見えてたわよ。
「素直なら何でも許される訳でもありませんからね」
「そもそもこの状況が起きているのは、
「一回言ってましたよ」
「えっ、嘘」
「ホント。商店街で」
「あれは千載一遇のチャンスを鷲掴みしたかった故の勢いだった……」
私は嘆息する。
「……察してますよ。十余年の付き合いですから。
「そうよ。恋しろ」
「雑な命令やめて下さい」
お前の能力上その気になったら実現出来るんだから冗談でも言っちゃいけない類の言葉だろマジで。冗談だって分かってるけれど。
つってもまあ、
「でも一目惚れって。いきなり言われてもどう答えればいいのか……。何か、根拠とか無いんですかね。私は
「そりゃあ一目惚れなんだし、顔と身体でしょ」
「断ろうかな。あのカス」
「陰口やめなさい」
「誘導しましたよね今?」
「だってあなたがまともに口を開く前に一目惚れって言ってたから。それか実は、以前どこかで会ってるとか」
「まさか。
「でもねえ。確かに一目惚れで結婚前提の告白って相当だし、ちょっと思い出してみてもいんじゃない?」
「
それに
「随分と能天気じゃないか。
粘性のある嫌味な笑い声を背に投げられ、不快感につい立ち止まって振り返る。
顔立ちは涼しげに整っているが内面から滲む陰湿さでどうにも爽やかに見えない、隣のクラスのストレートセンターパートの男子が立っていた。
その際は予想外の展開だったらしく執拗に食い下がって来たので、露骨に面倒臭がる
「いつも通りの時間に登校とは。今日は〝
うぜえなあ朝っぱらから。犬のウンコでも踏んどけよ。
なんて本心を見せないよう義務笑顔。
「おはようございます。
完璧だ。なんて外面のいい空虚な笑み。きっとメイド喫茶でも通じる。
然し
「おい誤魔化すなよ。僕の声が聞こえてなかったのか?
挨拶抜いて返事したらそれはそれでネチネチ言うだろうがお前。さーてどう収めようか。
なんて考え始めていると、
「何か用? デコ出し野郎」
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