03.「結婚を前提に付き合ってくれ!」
切っ先が届く前に四本が爆ぜた。
四本達の横っ腹を突くように誰かが放った、たった一振りの拳を浴びて。
誰だ? 姿を捉えようと目を凝らすが四本達の血と肉片に阻まれ、堪らず腕を翳して顔を庇う。
正体の見当が付かない。この町の
分からないまま落下し、膝を折って商店街の通路へ着地した。
「さっきの縁談話に話を戻すけれど」
血と肉片の雨の中、遠く正面方向から向かい合うように立っていた
立ち上がって視界の高さを確保すると、傘を差す誰かが目に入った。背を向けた詰襟姿の男だ。背が高い。百六十センチ後半の私が感じるとはかなりだ。巨漢と呼ぶには頼り無い横幅だが、しっかりと体重を支えている立ち姿で鍛えていると分かる。骨格から高校生だろうが、背中だけで誰か分かる程見知った者ではない。
「やっと許嫁候補が決まりそうだから、ゆくゆくはその人と結婚するかもしれない事になったの。その人、わざわざ実家からこっちに越して来てくれて。
見覚えの無い男が私へ向き直った。
髪を短く刈り上げた少年だった。きりっとした眉と精悍な眼差しが男らしい。テレビとかでイケメンと取り上げられるスポーツ選手みたいな雰囲気だ。ああいう視点で選手を取り上げる姿勢って、不真面目で不快だけれど。同時に、先程四本達を砕いた誰かの輪郭が、
神を拳一つで黙らせた男の隣で、ナポリタンの件を話していた時と変わらない調子で
「紹介するわ。彼がその許嫁候補、
ああ、成る程。
これは自由恋愛するんだと、散々縁談を蹴りまくって来た
「よっ。お勤めご苦労様ってな。
突然電源が切れたパソコンみたいに
いや何で?
……な、何? 舌でも噛んだ? まさかさっきの神の残党? 確かに頭と胴体見当たらなかったけれど。
慌てて跡形も無いアーケードを見上げた。背後も確かめる。何も無い。いや本当に何?
首を正面に戻すと、
「うおお!?」
驚きの余り飛び上がる。
デカいくせに音も無く寄るな! 近付かれて確信したが、身長百八十センチ超えてるぞこいつ!
「めっちゃ綺麗だ……!」
「な、はい?」
キモ。急に寄って来るなり何だこいつ。
思わず後退ろうと片足を引いた瞬間、
「お前の事が好きになった! 一目惚れだ! 結婚を前提に付き合ってくれ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます