樹菜、梨美菜と3人で住む とりあえず

岩田へいきち

樹菜、梨美菜と3人で住む とりあえず


「とりあえず、ぼくは、今日、家に帰って、妻と話して来ます。ママは、とりあえず、ぼくのベッドを使って下さい。シーツ換えていますから。樹菜と梨美菜は、来週新しいベッドが来るまではとりあえず2人で寝て」



 樹菜が3年生になるタイミングで妹の梨美菜もこのバドミントンの強豪高に来ることになった。元々、妹の世話もあるから樹菜だけとは住めないということで、ぼくが家政夫として一緒に住んでいたのだから、妹の梨美菜も一緒に住むのであれば、ママが両方の面倒を一緒に見れるのであって、ぼくの家政夫は要らなくなる。

妻の待つ、いや、待っていない自宅へ帰る用意をしていたぼくだったが、ママは、仕事があるから家に帰るという。ぼくは、予定を変更して、一旦自宅へ帰り、とりあえず、あと1年延長の許可を妻からもらうことにした。

今は、丁度、3人との話し合いを終え、自宅へ出発するところだ。



 「必ず帰ってきてね。梨美菜のためにね〜」



梨美菜がベッドに腰かけているぼくの後ろから首に手を回して抱きついてきた。


 くっ、苦しい。なんだよ。梨美菜、可愛い過ぎだろう。今日会ったばかりじゃないか。

樹菜は2人きりの時もそんな事しなかったぞ。

そっか、みんないるから安心してやってるのか。



「寛、帰って来てね〜」


 今度は、樹菜も後ろから抱きついた。くっ、苦しい。嬉しい。樹菜がこんなことするの初めてじゃないか。梨美菜のおかげだ。ありがとう。



「いや〜、寛は、私のもの」



ぼくは、樹菜から引き剥がされた。

だから梨美菜、今日会ったばかりだって。

ぼくは、そもそも、樹菜のためにここにいるの。言ってもしようがないか。


「いや〜、寛は、最初から私のものなの」


ぼくは、また樹菜の方へ引き戻された。

おいおい、ぼくは、ものじゃないぞ。でもなんだか楽しい。このふたりと暮らしたら毎日こんなことになるのか? たいへんそうだけど、楽しそう。


「こらこら、ふたりともやめなさい。そんなことしてたら寛さん、帰って来ないわよ」


「いや〜、帰る前に、樹菜と梨美菜とどっちが好きか言って」


「寛は、樹菜のことが好きなの」


「いや〜、寛、梨美菜のことが好きよね? どっちが好きかはっきりして」


だから会ったばかりだって。


「分かった、わかった。じゃ、はっきりさせてから帰る」


 困った。このふたりと暮らしたらいつもこんなことが続くのか。


「ぼくが今一番好きなのは、トリあえず、ママだ。じゃ、またね」


「寛・・・・・・」



終わり(つづくかも?)

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