第57話 天使とデート
いよいよ明日は前田紗栄子とのデートだ。俺は明日、告白する。だが、問題はどこで告白するかだ。デートの条件として、行く場所は全て前田さん任せになっている。今のところ行く場所がどこかは聞いていないので、告白にふさわしい場所があるかどうかはその場で何とかするしか無さそうだ。
と思ったら、前田さんからメッセージが届いた。明日の予定だそうだ。
1.10時に学校裏門前
2.博物館
3.美術館のカフェでランチ
4.熊本城
5.城彩苑
……これ、デートというか社会科見学の予定のようになっているが、大丈夫だろうか。前田さんらしいプランだ。
しかし、最後は城彩苑か。ここは熊本のお土産を買えたり飲食店がある場所だ。最後はここで何か食べて解散だろう。告白するなら、この周辺のどこかだな。うーん、この近くで人が比較的少なめの場所、か。無いことも無いな。
俺は告白の場所を決め、この日のために考えた作戦を再検討し、改めてイメージトレーニングをする。
よし、たぶん、大丈夫だ。
◇◇◇◇
翌日、俺は学校裏門前に急いだ。余裕を持ってきたため、30分前には着いてしまう。周りには誰も居ない。しばらく待つか。
だが、その間にも学校の裏門なので部活をやっている生徒たちが出入りしていた。うーん、こんなところで待ち合わせをしたらみんなに見られてしまう気が。
そんなことを思っていたら、学校の方から前田さんがやってきた。
「あ、あれ? こっちから?」
「あ、中里君。早いね、待った?」
「いや、大して待ってないけど、なんで学校から?」
「有紀が一度学校に寄れって言うから。髪とかチェックしてもらってた」
「あー」
小島は部活で学校に居る。前田さんのファッションをデート前にチェックをしたかったんだろう。
今日の前田さんの服は、以前にバスセンターや映画館で会ったときと同じだった。お気に入りなんだろう。
「前田さん、前も言ったけどその服似合ってるね」
「中里君、この服のとき毎回言ってるね」
「お、おう」
「中里君もいつもと違っていい感じだよ」
「そ、そうか」
昨日、頑張った甲斐があったな。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
俺たちは博物館まで歩き出した。
歩きながら俺は前田さんに聞いた。
「俺は博物館は子どもの頃に行ったきりであんまり覚えてないんだ。前田さんは?」
「うーん、たまに行くかな」
「そうか。行ってるんだな。じゃあ、なんで今日は博物館にしたの?」
「そりゃ、デートと言えば、プラネタリウムじゃない?」
なるほど。熊本博物館にはプラネタリウムがあったな。
「俺はプラネタリウム自体行ったことが無いな。星座とか見るんだろ?」
「それもあるけど、今日は上映しているものが面白そうだったから」
「上映?」
「うん。星座の紹介の後に、映画みたいなのがあるんだよ」
「そうなんだ」
そういうものがあるとは知らなかった。映画か。だったら楽しめそうだな。
「今日の映画はね、超ひも理論についてだよ」
「ちょ、超ひも理論?」
なんだっけ? 聞いたことがあるような、無いような。
「うん。超弦理論。万物の理論をテーマとした作品なんだけど、ミクロの世界からマクロの世界までを説明できる理論なんだって」
「へ、へぇー」
「そう。超ひも理論では、宇宙は9次元の空間とされていて……」
前田さんは超ひも理論について説明をしてくれた。感想としては、やはり、前田さんはすごいな、としか言えなかった。
「な、なんか難しそうだな。俺、ついていけるかな」
「大丈夫。中里君なら余裕だよ」
前田さんの信頼がつらい。だが、プラネタリウムで一般向けに上映される映画だ。おそらくついていけるだろう。
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