第56話 試験後の約束
教室でがっくりとうなだれていると、そこに小島と前田さんがやってきた。
小島はやっぱりニヤついている。
「中里、残念だったねー」
くそっ。小島のやろう。
すると、前田さんが俺の方に来た。
「中里君……」
「前田さん、今回も俺の負けだ。デートは出来ないな。ハハ、残念だ」
「中里君、覚えてる? 順位発表後の約束」
「順位発表後の約束?」
そういえば、前田さんが俺に言うことがあるって言ってたな。
この状況で言いたいことって何だろう。まさか、ボディガードをクビって言うんじゃ……
「い、言いたいことがあるんだったよな」
「そう」
「あの、ストーカーもまた出るかもしれないし、ボディガードは必要かと……」
「……何の話?」
「え? 違った?」
「私が言いたいのはデートの話」
「は?」
前田さんが……デートの話?
「なんで私とデートするのに期末テストで勝つ必要があるの?」
「へ?」
前田さんはちょっと怒った声で言った。
「デートしたいなら普通に誘えばいいのに。私で良ければ全然行くよ。中里君とはそれなりに仲良くなったつもりだったけど、試験に負けたらデートって、罰ゲームみたいじゃない?」
「あ、いや、その……」
まさか普通に行ってくれるなんて思わなかったし。
「中里、これはあんたが悪いわ」
小島が言う。
「ごめん。じゃ、じゃあ、前田さん。今度の日曜、俺とデートしてくれるか?」
「うん、いいよ」
「!!」
な、なんだ。普通に誘えば良かったのか。
「でも、今回のことで私傷ついたから」
「ごめん。ほんと、ごめん」
「だから条件付きね」
「え? 条件って?」
デートが出来るならどんな条件でも俺は飲む。当たり前だ。俺は相当厳しい条件を覚悟した。
「今回は私が行きたいところに連れてって」
「え? それだけ? もちろん、いいよ」
「うん、良かった。じゃあ、行き先は私が決めて連絡するね」
「わかった……」
よしっ! 俺は前田さんに見えないように渾身のガッツポーズをした。
「中里君、それともう一つ忘れないでね」
「え?」
「デートに誘った理由。そのとき教えてくれるんでしょ?」
そうだった。前田さんは俺が小島のことを好きだと思っている。にもかかわらず、なぜ前田さんをデートに誘ったのか。答えは前田さんが好きだから、ということになる。それを教えると言うことは、つまり、告白をするということだ。
「もちろん、必ず教えるよ。ちなみに……前田さんはどう予想してる?」
「うーん、いろいろ考えたんだけど、正直全然分かんなくて……」
「そ、そうか」
「小説読んで勉強している私がわかんないんだから気になっちゃって。だから、必ず教えてね」
「う、うん」
やっぱり、全く気がついていないようだ。
小島はにやついていた。
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