第55話 期末テスト
期末テストが始まると、俺は前田さんとほとんど話さなくなり、試験に集中した。とりあえず、学年1位になる以外にこの状況を打開する手は無い。俺は試験に賭けた。
確かに問題は難しかった。だが、手応えは過去最高と言っていい。これなら誰にも負けないだろう。
そして、試験の順位発表の日が来た。
俺は待ちきれず学校に朝早く来た。いつもの場所に順位表はまだ張り出されていなかったが、そこに誰か居た。
「よう、中里」
「三枝か」
三枝四郎も朝早く来ていた。
「中里も順位表を見にこんなに早く来たのか?」
「まあな」
「珍しいな。いつも居ないだろ」
「お前はいつも居るのか?」
「そうだぞ」
こいつは順位にこだわりがあるやつだったな。それに前回は3位から4位に落ちたから今回の順位がとても気になっているのだろう。
俺がなぜ早く来たのか、三枝に少し教えてやるか。
「俺は今回の結果にいろいろ賭けているからな。気になって早めに来たんだよ」
「賭けてる? 何をだ」
「俺が一位になったら……前田さんとデートする」
「はぁ?」
三枝が驚いている。ふふ、俺が前田さんとデートすると聞いて焦ってるな。
「中里、お前が一位になれるわけ無いだろ」
「なんでだよ。今回手応えが良かったぞ」
「無理だな。前田さんが一位だ」
「いや、俺が一位だ。前田さんとデートする。そして、告白する!」
「こ、告白?」
「そうだ」
三枝はショックを受けているようだ。
「そ、そんなことさせるか」
「俺が一位になればお前には止めるすべはない」
「そ、そんなことには、ならない! ならない……はずだ……」
三枝の声が小さくなっていった。
「どうかな。お、来たぞ」
先生が順位表を持ってきて張り出している。
頼む、結果は……
1位 前田紗栄子
2位 中里蒼
「――――いや、やっぱりいつもと同じじゃねえか!」
俺の叫びが響く。
「ハハハ、中里、お前最高だな」
三枝は笑い転げていた。
「はぁ……。最悪だ。俺はこれからどうしたら……あ?」
よく順位表を見たら……
「三枝、お前、5位だぞ」
「は!? あ、俺5位だ」
「うん、5位だな」
「5位……」
俺と三枝はうなだれたまま自分の教室に向かった。
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