第52話 天使と約束
期末テストが近くなり、学校はテスト勉強期間に突入した。つまり、部活はお休みだ。ということは、食堂での勉強会は無くなる。
放課後になると、前田さんは小島と一緒に帰ることになる。中間テストの時は俺はお役御免だった。ということで、2人が帰ろうとするのを自分の席で見送っていたがなかなか帰ろうとしない。
俺も帰り支度を終え、席を立った。すると、小島が話しかけてくる。
「中里、遅い。さ、帰ろうか」
「は? 俺を待ってたのか?」
「そうだよ。ボディガードでしょ」
「いや、今日はお前が居るだろ」
「食堂帰りも同じだけど、一緒に帰ってるでしょ」
「そりゃそうだけど」
「じゃ、行こう」
結局、小島と前田さんと俺は一緒に廊下に出た。よく見たら後ろにハカセもいる。偶然を装って小島に近づこうとしてるな。
帰り道、結局4人はいつものように横に広がった。
「はぁ。期末テストか。きついなあ」
小島が言う。
「俺にとってはチャンスだな。今回は前田さんに勝ちたい」
「へぇー。勝ってどうするの?」
小島が挑発してきた。
だが、俺には考えがあった。
「前田さん、もし俺が1位になったら、俺と……」
「なに?」
「……デートしてくれないか」
「へ?」
前田さんが立ち止まった。驚いているのだろう。
「あー、わかった。有紀も一緒にってことね」
「違う。前田さんと2人で、だ」
「は?」
前田さんは俺が小島を好きだと思っている。だが1位になったご褒美に前田さんとデートして欲しいと言えば、俺の気持ちに気がつかざるをえないだろう。そういう作戦だ。
「えっと、いろいろ聞きたいんだけど、まず、なんで? なんで、私?」
「え? そ、それは……」
しまった、ここで理由を聞かれるとは思っていなかった。しかし、それは前田さんが好きだからだ、なんて言うことはできない。それは告白と同じだ。今言ったら間違いなく撃沈だ。しかし、嘘の理由を言っても小島が好きという誤解を解くことが出来なくなる。これはどうしたものか。
「その理由はデートの時に教えるんだって」
小島が助け船を出してきた。
「そ、そうだ。デートの時に教える」
助かった。ん? デートの時に教えるということはデートの時に告白する、ということにならないか。しまった、小島の助け船には罠があったか。
しかし、誤解を解くにはもうそれしかないだろう。俺は覚悟を決めた。
「ふーん……」
前田さんが不審そうに俺を見る。
「よくわかんないけど、デートの時に聞けるんならいいか。何か理由があるんだよね?」
「そ、そうだ」
「ふーん、やっぱりか」
前田さんはまだ誤解したままのようだな。とりあえず、今はそれでいい。
「あと、デートってどこ行くの?」
「そ、それは……まだ考えてない」
しまった。前田さんに勝つことに現実味が無くてまだ考えていなかった。
「そっか。うん、よくわかんないけど、とりあえずいいよ」
「いいのか。よし、期末テストに俺が勝ったらデートだ。ふふ、楽しみだな」
後は期末テストに勝つだけだ。そして、いい雰囲気に持って行き、告白する。
勝利のラインがついに見えた。
「ただ、私も期末テストの順位が出た後に中里君に言うことがあるから」
「え?」
前田さんの言葉に驚いた。なんだろう。まさか、告白……なわけないよな。前田さんが俺を恋愛対象としてみていないことは間違いない。だったら、わざわざ期末テストの後で何を言いたいのか。全く見当が付かなかった。
「わ、わかった。テストの後な」
「うん、忘れないでね」
前田さんはよほど俺に言いたいことがあるようだ。
「小島さん、俺も期末テストで小島さんに勝ったら2人で……」
ハカセが俺の提案に便乗してきた。
「え、ハカセと私? そんなのハカセが勝つに決まってるじゃん。ダメだよ」
「そ、そうか。そうだよな、ハハハ」
ハカセ、撃沈か。
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