第51話 三枝と告白

 その日の放課後、今日も俺は前田さんと食堂に行く。前田さんの隣にいつものように座ると、反対側に三枝がやってきた。


 ん? 三枝は彼女が出来たのでは。それでも、ここに来るとはほんとに勉強しに来てたのか?


「三枝、お前彼女出来たんだってな。ここに来てていいのか?」


 一応聞いてみる。


「いいんだよ。第一、彼女なんて居ない。前田さんの前で余計なこと言うな」


 三枝がにらんできた。あれ? 桐生の勘違いだったのか。いや、三枝が騒いでいたって言ってたよな。


「だって、告白されたって聞いたぞ」


「……こくだったんだよ」


「え? なんて?」


 三枝の声が小さくて聞こえない。


「だから、嘘コクだったんだよ!」


 三枝が下を向いたまま言った。あらら、やっぱり騙されてたか。


「罰ゲームでの告白だったのか?」


「そうだよ。全く、ギャルを信じた俺がバカだった」


 その気持ちは分かるぞ、三枝。


「あー、三枝君も罰ゲームで告白されたんだ。その気持ち分かるよ」


 前田さんが言ってきた。


「前田さん。ありがとう」


「うんうん、私もよくあるから」


「え? 前田さんも?」


「しょっちゅうだよ。いつも告白の手紙入ってるから最近は無視してるんだ。三枝君も無視した方がいいよ」


 うーむ、前田さんはあきらかに勘違いしていると思うが。三枝も悟ったようだ。


「あー、そういうこと。確かにね。そういうのは無視した方がいいね」


「うん、そうだよ」


「……えーと、前田さん、告白の手紙って無視してるの?」


 今日は前田さんの前に座っている桐生が聞いてきた。


「うん。嘘コクって分かってるから全部捨ててる」


「あ、そうなんだ。だからか……」


 こいつ、手紙を入れたことがあるらしい。

 なんか、前に座ってるやつも何人か微妙な顔してるな。こいつら……


「その……前田さんはどういう告白をされたいとかある?」


 桐生、今日は積極的だな。生意気なやつめ。


「私? 特にないけど、やっぱりお互いをよく知った上で言って欲しいな」


「あ、そうだよね。ははは……」


 まあ、そうだな。だから、お前らには可能性は無い!

 桐生にとどめを刺しておくか。


「ところで、前田さん。こいつの名前、分かる?」


 桐生を指さして前田さんに聞く。


「え? ……わ、分かるよ。えっと……木谷君だよね」


 絶対、勘で言ったな。まあ「き」は合ってた。


「……桐生です」


「あ、そうそう。桐生君、桐生君。ごめんね、ど忘れしちゃっただけだから」


 桐生は落ち込んでいるようだった。すまんな。

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