第40話 リビングの天使
※ 39話公開の前に公開してしまいましたので、39話を読んでいない方は39話を先にお願いします。
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私、前田紗栄子は小島有紀と一緒に中里君の家に風邪のお見舞いに来ていた。
中里君の部屋を出た私たちはリビングに向かう。
「さて、茜ちゃん。お菓子食べようか」
「はい! ありがとうございます。じゃあ、コーヒーでいいですか?」
有紀は茜ちゃんと食べようとたくさんのお菓子を買ってきていた。
それを広げて3人で食べ始めた。茜ちゃんは私たちのためにコーヒーを入れてくれた。
「それにしても、茜ちゃん。朋美にいろいろ話したでしょ」
有紀が茜ちゃんに言う。
「え!?」
「食堂のこととか」
「あー、あれですか」
なんだろう?
「朋美さんがどうしてもお兄に勉強教えてもらいたいって言うから秘策をちょっと……」
「ふーん。やっぱり、茜ちゃんとしては朋美のこと応援してるんだ」
「いえ、そういうわけじゃないですよ。私は中立です」
「中立ねえ」
そっか。茜ちゃんは中里君の元カノさんと親しいんだ。元カノさんとよりを戻すように動いているのかな。それに有紀は引っかかってるのか。やっぱり、有紀は自分と中里君がうまくいくように応援してもらいたいのかな。
「正直に言えば朋美さんがいいですけど、ちょっと無理かなって思ってます」
「そうなんだ」
「はい。もう、お兄の気持ちが離れちゃってるみたいで」
「そうみたいね。最初はまだ未練あるって思ってたから安心してたんだけど」
「安心?」
「うん。紗栄子に手を出すことはないだろうって」
「あぁ」
そういえば、言っていた。中里君はギャル好きだから大丈夫って。
「でも中里、ギャル好きじゃ無くなったって言ってて」
「あー、そこまで言ってましたか」
中里君、ギャル好きじゃ無くなってたのか。じゃあ、どういうタイプが好きなんだろう。そう思い、ふと有紀を見る。そっか、有紀はギャルとは違うもんね。スポーティーなタイプ。こういうタイプが好みになったのかな。
「で、有紀さんはやっぱりお兄の望みを叶えてあげたいんですか?」
うわ、茜ちゃんがストレートに聞いてきた。中里君の望みって有紀と付き合うことだよね。
「いや、そういうわけじゃないよ。私も中立」
「あ、そうなんですか」
中立って。まだ保留中ってことなんだろうか。中里君、まだ望みありそう、頑張って!
「私はあくまで紗栄子の味方だから。紗栄子次第」
「え?」
私次第って、どういうことだろう。
「あ、今更ですけど紗栄子さんの前でここまで話してしまって大丈夫ですか?」
茜ちゃんが有紀に聞く。
「大丈夫、大丈夫。紗栄子は鈍いから何の話か分かってないよ」
そんなことない。私も小説で恋愛を勉強してるんだから話しについていけてるし。「私次第」って、要は私が有紀と中里君の交際を許すかどうかってことでしょ。
「私も分かってるから。有紀が望むようにしたらいいと思ってるよ」
「は?」
茜ちゃんは驚いたように私を見た。
「ね、大丈夫でしょ」
有紀がお菓子を食べながら茜ちゃんに言う。
「紗栄子さん、やっぱりそういう人ですよね……。お兄も大変かも」
え、何か間違ったこと言っちゃったかな。
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