第39話 天使のお見舞い

 翌日、俺は朝起きたときから体がだるかった。膝も痛い。

 やっちまったか。熱を測ると38度だった。学校は休むしか無いな。


 母親が学校への連絡はしてくれた。そして、茜と共に出かけて俺は一人になった。

 今日はゆっくり休むしかない。


 しかし、心配なのは食堂だ。前田さん、俺が居なくて大丈夫だろうか。

 とりあえず、小島にメッセージを送る。


 蒼『風邪引いた。今日は学校休む』


 しばらく経つと返事があった。


 有紀『今日は私の部活無いから安心して寝てて』


 そうか。小島のバスケ部が休みなら前田さんは食堂に行かず、一緒にすぐ帰ることが出来る。これは安心だ。


 安心したら眠くなった。俺はすぐに深い眠りに入った。



◇◇◇



 扉が開いた音で俺は目覚めた。


「お兄、大丈夫?」


 茜か。何で居るんだ? と思い時計を見るともう帰ってきてもおかしくない時間だった。


「ああ、なんとかな」


 そう言いながら、熱を測る。37度0分。かなり下がったようだ。


「ほい」


 茜がスポーツドリンクを持ってくる。俺は一気に飲んだ。


「まだ寝てなきゃダメだよ」


 茜は部屋から出て行った。確かにまだ体が少しきつい。寝るか。


 だが、なかなか寝つけなかった。すると、家のチャイムが鳴る。茜が対応してくれているようだ。

 しばらくすると、いくつかの足音が近づいてきて俺の部屋をノックした。


「はい」


「中里、入っていい?」


 小島だ。お見舞いに来たのか。小島が風邪を引いたときに俺は前田さんと見舞いに行った。それもあって、来たのだろう。


「小島か。ああ、いいぞ」


 小島が部屋に入ってきた。


「お邪魔します」

「中里君、大丈夫?」


 あれ? 前田さんも居た。


「前田さんまで。わざわざ、ありがとう。もう熱は下がったよ」


「そっか、良かった」


 前田さんが言う。


「お-、ここが中里の部屋かあ。何も無いね」


 小島は俺に部屋を見渡して言った。確かに俺の部屋は何もない。今の趣味は小説とスマホゲームぐらいだし、買いたい物も無ければ金も無いからだ。


「有紀、失礼だよ」


「なんか紗栄子の部屋と似てるね」


「え? そうなのか?」


 前田さんの部屋には当然ながら行ったことが無い。どんな部屋なんだろう。


「あ、紗栄子に失礼か。紗栄子の部屋はもっと本があったね」


「へぇー、そうなんだ」


「うん、それ以外何も無いのは一緒かな」


 前田さんらしいな。一度見てみたい。


「あ、いろいろ買ってきたよ」


 小島がコンビニの袋を差し出す。


「お、すまんな」


 プリンやヨーグルト、スポーツドリンクが入っていた。


「わーい、食べましょう」


 ん? よく見ると茜も部屋に居た。


「おい、俺に持ってきてくれたんだろ」


「あ、私たちはこっち」


 小島はもう一つの袋を取り出す。それにはお菓子がたくさん入っていた。


「お前らも食べるのか」


「あとでね」


「全く。俺のお見舞いにかこつけて茜とお菓子パーティーしに来たんじゃないのか」


「まあ、そう言わないで。紗栄子も連れてきてあげたんだから」


 小島が恩着せがましく言う。


「え? 私?」


 前田さんは不思議がっている。


「……そうだな」


 俺は感謝せざるをえなかった。


「あ、そっか。中里君、ごめんなさい。私が傘を借りたせいで」


 前田さんが言う。謝罪のために連れてこられたと思っているようだ。


「前田さんのせいじゃないよ、俺が確認もせず、アホだっただけだ」


「お兄がかっこつけるから」


「うるせー。お前は外に出てろ」


「ええー!」


 茜が文句を言いつつ部屋を出て行った。


「私たちもそろそろ……中里は寝てて」


 小島が言う。


「あー、そうだな。わざわざ、ありがとう」


「うん、じゃあね」

「中里君、ほんとにありがとうね」


「いいよ」


 2人は部屋を出ていった。

 それにしても、前田さんが俺の部屋に来てくれるなんて、今日はいい一日だ。


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