第37話 天使の推測

 放課後、今日も私、前田紗栄子は食堂での勉強会を終え、みんなと帰っている。私の隣にはいつも有紀と中里君が居てくれる。その横に三枝君、今日は有紀の横にハカセ君も居る。


 中里君が有紀になにげなく言った。


「そういえば、小島。お前って交友範囲広いよな」


「うん。まあね」


 確かに有紀は誰とでもすぐに仲良くなって、友達になれる。そういうところはほんとにすごいと思う。私にはとても出来ないことだ。


「お前、特定の人と親しくしたりはしてないのか?」


「へ? 紗栄子と親しくしてるけど」


「いや、そうじゃなくて。つまり、男子で親しい人だよ」


 中里君は唐突に有紀にそう聞いた。それって、つまり……


「彼氏ってこと?」


「まあ、そういうやつだよ」


 中里君、有紀に彼氏がいるか気になるんだ。やっぱり、そういうことか。なんで元カノさんと復縁しないんだろうって思ったら、有紀のことが好きだったんだ。


「今は居ないかな」


「そうか」


 有紀は今、彼氏は居ない。それは私も聞いている。過去には居たようなことも言っていたけど、あまり詳しくは知らなかった。


「それに私、男子ともよく話すけど、今一番話す男子は中里だよ?」


「あ、そうなのか」


 うわ、今のは中里君、うれしいだろうな。照れてる、照れてる。ふふ。


「今はいろいろ忙しいからねえ。彼氏は作れないかな」


「そ、そうか」


 あらら、有紀もつれないなあ。中里君、もう振られちゃった。ここはフォローしておこう。


「でも、有紀。絶対に彼氏作らないって決めてるわけじゃないんでしょ?」


「え? まあ、そうだけど」


「じゃあ、チャンスあるね」


 中里君にほほえみかける。


「そうだな……」


 中里君は何か遠くを見ていた。大丈夫、頑張って!


「そういえば、ハカセ。お前は彼女居ないのか?」


 え? 中里君は急にハカセ君に尋ねた。


「俺に居るわけないだろ」


 ハカセ君が答える。


「はは、まあそうだな。ハカセも彼女がいないっと」


 えー、どういうこと? 中里君、ハカセ君にも確認するって、まさかハカセ君のことも……なんてあるのかな。


「ま、放課後にこうやって帰ってる連中はみんな恋人居ないでしょ。ね、紗栄子」


 有紀が私に話を振ってきた。


「え!? 私はもちろんそうだけど……。でも、みんなのこと応援してるよ!」


「「は?」」


 有紀や中里君が何か驚いている。ふふ、私がいろいろ気がついていること、わかってないだろうなあ。私も小説読んで恋愛の勉強してるんだから。いろいろ気がついちゃうのよ。


 あー、カップルが成立した後、私が気がついていたことを話してあげたいなあ。驚くだろうな。


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