第28話 天使の勉強会
有紀と委員長と私の3人での勉強会は私、前田紗栄子の家でやることになった。
「ここが私の部屋だよ」
有紀は何回も来たことがあるけど、委員長の山田さんは初めてなので案内する。
「お邪魔しまーす。うわー、まじめな部屋」
「そ、そうかな」
私の部屋は本でいっぱいで、他には何も無い。自分でも地味な部屋だと思う。
「勉強会にはこの部屋が一番でしょ。何の誘惑も無いから」
有紀が言う。褒められているんだろうか。
「さすが前田さんね。驚いたけど、やっぱり尊敬するわ」
「尊敬だなんて…」
委員長の山田さんとはそれほど親しいわけじゃないけど、有紀が風邪を引いたときに私を守ってくれて、それから結構話すようになった。山田さんは有紀と違って成績はいい方だ。だから、勉強会に参加したいと言われたときは意外だった。有紀もそれが不思議だったようだ。
「私は今回部活が忙しくて。それに風邪で休んだからマジでピンチなんだ。愛理は何で今日来たの?」
有紀がストレートに聞く。有紀は山田さんと仲がいい。というより、誰とでも仲がいい。人付き合いがそれほどうまくない自分からしたら、本当にすごい。
「私? もちろん成績を上げるためよ。でも、それ以外に、聞きたいことがあったから」
「聞きたいこと?」
「うん。前田さんに」
「え? 私に?」
なんだろう。聞きたいことなら教室で聞いてくれていいのに。
「ほら、この間、有紀が休んだときに私が男子追い払ってたでしょ。そのとき、中里君だけは大丈夫って言ったじゃない?」
「あー、そのことか」
有紀はどういう話か分かったようだ。
「2人、どういう関係なのかなって」
山田さんが言った。関係? どういうことだろ。
「要するに、2人付き合ってるの?」
「え!?」
思わぬ言葉に山田さんをまじまじと見る。
「私と中里君が!? 付き合ってないよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ、もしかして好きな人?」
「違うよ、そういうのじゃないから」
びっくりした。そうか、そんな風に見られてしまうんだ。何と説明していいのか、有紀の顔を見ると有紀がようやく説明を始めた。
「中里には紗栄子のボディガードを頼んでるんだ」
「ボディガード?」
「うん。放課後の食堂とか私の目が届かないところがあるから、そういう場所では紗栄子をガードしてもらってる」
「へぇー」
「あとはストーカー出たときに追い払ってもらったり――」
「ストーカー!? 前田さんにストーカーが居るの?」
山田さんは驚いたようだ。
「うん、ちょっとね」
私はごまかした。幼馴染みがストーカーしてるなんて言えない。
「中里は見た目がアレだからボディガードとしては優秀なのよ」
小島がコーヒーを飲みながら言った。
「まあ、それは分からないでもないけど。でも、どうして中里君はその役を引き受けてるのかしら」
「あー、学年1位がどうやって勉強してるか知りたいからって言ってたよ」
そういえば、そうだった。せっかくボディガードやってもらっているのに私が中里君に勉強法を教えたことはほとんど無い気がする。なんか申し訳ない。
「なんだ、そういうこと。てっきり、中里君が前田さんを――」
「あ、そういうのじゃないよ」
「そうだよね、中里君はギャル好きだし」
山田さんも中里君と元カノさんとの話を知っているようだ。中里君が私を好きとか変な噂が流れたら中里君も困るだろう。私もちゃんと否定しておこう。
「うん、中里君は私と仲がいいっていっても、有紀の方が仲がいいぐらいだから」
「え? そうなの?」
「そうだよ。3人で居たら、だいたい有紀としゃべってるし」
「へぇー」
山田さんが有紀を見る。あれ? 誤解させちゃったかな。
「ちょ、ちょっと、紗栄子。変なこと言わないでよ」
「ふーん、そういうことか」
「違うからね」
山田さんは納得してしまった。
あれ、でもほんとに中里君はいつも有紀と話してるし、そういうことなのかな……。今まで気がつかなかったけど、中里君、有紀のこと好きなのかも。これから、しっかり観察してみるか。
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