第23話 連休最終日
あっという間に連休最終日。俺は2日目以降、まじめに毎日勉強してきた。前田紗栄子もおそらく同じだが小島有紀と一日は遊びに行くはずなので、今日、俺が丸1日勉強すればその分差が付くはずだ。こうして地道に積み重ねが打倒・前田紗栄子につながる。
そんなことを思いながら朝から勉強していたのだが、お昼近くになって部屋の扉が開いた。
「お兄、今日暇?」
妹の茜だ。
「見て分かるだろ。勉強中だ」
「清楚系の子とは会ったりしないの?」
「誰だよ。お前知らないだろ。そんな会ったりできねーよ」
「あー、やっぱり清楚系なんだ」
「まあな。ってうるせーよ」
「まあなんでもいいや。暇でしょ。今から出かけよ!」
「はぁ? 俺は今大事なところなんだよ。ここで頑張らないと学年1位になれねーんだぞ」
「学年1位? そんなのいいでしょ。私、暇なんだもん」
「友達と遊んでこい」
「みんな彼氏いて私だけ一人だもん」
最近の中学生は……。
「お兄が振られたとき、外に連れ出してあげたでしょ」
「うっ…」
俺が朋美に振られてふさぎ込んでいたとき、茜は俺を外に連れ出してくれた。それでだいぶ気が楽になったのは確かだ。あのときのことを言われると何も言い返せない。
「わかったよ。いくか」
「やった!」
茜は無邪気に喜んだ。
「で、どこ行くんだ?」
「バスセンター。くまモン見たい」
「くまモン村か」
バスセンターはショッピングモールも併設していて、その2階に「くまモン村」がある。「くまモン村」は普段はくまモングッズを売っているが、ときどき「くまモン」本体も来て、ショーをやっている。茜は小さい頃から「くまモン」のようなゆるキャラが大好きだった。
「じゃあ、行くか」
「うん! お昼美味しいものおごってね」
「おい!」
どうやらそれが本当の狙いのようだ。仕方ない。
俺たちは路面電車に乗り、熊本城に近いバスセンターに向かった。
◇◇◇
一方、その頃……
「有紀、今日はどこ行くの?」
「うーん、その前に……」
私、前田紗栄子は親友の小島有紀と自分の家の前で待ち合わせていた。連休をほぼ勉強で費やした私だけど、今日は有紀とお出かけだ。有紀はバスケ部の活動が忙しく、今日ぐらいしか空いていなかった。
「……その服なんだけどさあ」
「え?」
有紀が私の服を見て言う。
「中学生の頃から着てない?」
「そうだよ。よくわかったね」
私の今日の私服は中学生の頃からのお気に入り。胸に大きく描かれた猫のキャラクターが気に入っている。ただ、今は痩せたから少しぶかぶかだ。
「もう高二なんだから、もうちょっと大人っぽい服着た方がいいと思うよ」
「そ、そうかな」
「うん。これから彼氏とデートすることだってあるかもしれないし」
「彼氏!? そんなのできないよ、私には」
「はぁ。そういうこと言うの、私の前だけにしておいてよ。他の子の前だと反感買うよ?」
「え? よくわからないけどそうなんだ。気を付けるね」
「というわけで、今日は紗栄子の服を買いに行きます!」
「私の服!?」
「うん。近場にしよう。バスセンターいこうか」
「……はぁ。わかったよ」
私たち2人はバスセンターに向かった。
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