第11話 小島との約束
その日の放課後、
食堂に入り、前田さんが昨日と同じ席に着くと俺もすぐ横に座った。少し遅れてきた
「
「空いてたからな」
三枝が昨日言った言葉で返す。三枝は不満はありそうだったが反対側の前田さんの隣に座った。
そうこうしているうちにどんどん人が増えてくる。また、10人ほどの集団になった。
そして、次々に質問が飛んでくる。俺はそれをすぐに横取りして教えていく。前田さんが教えているものもできるだけ介入して一緒に教えるようにしていった。男どもにかなり不満を持たれているのは分かっている。だが、俺は気にしなかった。
中には俺にも難しい問題がある。そういう問題は前田さんにまかせるしかない。そんなときは俺も一緒に解説を聞く。前田さんの説明はわかりやすく、丁寧だ。心地よい声での解説を聞いていると、天使と呼ばれるのも納得だ。
「おい、中里。なに前田さんに見とれているんだ」
三枝が言ってきた。
「み、見とれてなどいない。俺は解説を聞いていただけだ。で、前田さん。じゃあ、この場合は……」
俺は質問することでごまかした。
そんなことをしていると、あっという間に時間が過ぎる。
小島が慌てて駆け込んできた。
「ごめん、ちょっと遅くなった」
「ううん、大丈夫だよ」
「じゃあ、帰ろうか」
「うん!」
みんな一斉に帰り支度を始めた。帰り道、昨日は俺はぽつんと後ろにいたが、今日は前田さんの隣に付く。反対側には小島で両脇を固めた。
「中里、大変じゃなかった?」
「いや、大丈夫だ」
「ほんと?」
小島が前田さんに聞く。
「中里君、すごい活躍だった。助かったよ」
「そ、そうか」
前田さんが褒めてくれるとやはり嬉しい。
「顔、ニヤけてるよ」
小島が俺に言う。
「うるせーよ」
思わず顔を背けると、三枝がにらんでいた。
「結局、お前も同じなんだな」
三枝が俺に言う。
「ちげーよ。俺は……ただのボディガードだ」
前田さんをガードする役目をどう伝えようかとしてボディガードという言葉が思わず出てきた。
「ボディガード?」
「ああ。前田さんが困らないように守っているだけだ」
「そんなのお前が勝手にやっていいわけないだろ」
「勝手にやってるんじゃない。公認だ。な、前田さん」
「?」
前田さんが俺を見る。
「俺は前田さんのボディガードだよな?」
「ボディガード?」
急に「ボディガード」という言葉を使ったから前田さんはとまどっているようだ。
「えぇ。そうよ」
そこに小島が口を挟んできた。ありがたい。
「そんなのいいのかよ。こいつも男だぞ」
三枝が小島に言い返す。
「いいのよ。中里はギャル好きなんだから大丈夫。三枝も知ってるでしょ?」
「あ、そういやそうだったな。じゃあ、大丈夫か」
三枝も納得してしまった。
俺のギャル好きはそんなに説得力があるのかよ。
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