第8話 お礼
「私、山口葵っていいます!昨日職員室にハンカチを届けてくれたんだよねっ!」
「うん。あ、もしかして落としたのって…」
「そうっ!私っ!昨日からずっと色んな所探してたんだけどなかなか見つからなくて…。さっき職員室にも行ったら、届けてくれた人がいるって聞いたからお礼言いに来たんだっ!」
「なるほど。手元に戻ったなら良かったよ」
「本当にありがとうっ!」
「いえいえ、どういたしまして」
話はこれで終わりかなと思い、教室に戻ろうとした時だった。
「あ、あのさ!」
「うん?どうした?」
「何かお礼したいんだけど…。」
「お礼?今言ってもらったからそれで十分だよ」
「そんな事言わないでさ、何かさせてよ~」
まいったな、何もないんだけど。でも何か言わないと納得してくれないんだろうなぁ。
ジーッとこっち見てるし。
「じゃあさ、都合良い時一緒にお昼ご飯食べてくれないかな?俺転校してきたばっかりでまだ友達少ないんだよね。だから仲良くしてくれたら嬉しいんだけど…。」
「そうなんだー!じゃあ早速今日のお昼一緒に食べよっ!」
「うん」
そんな話をしているとチャイムが鳴った。
「あっ、もう行かなきゃ。また後でねっ!」
そう言って山口さんはクラスに戻っていった。
俺もクラスに戻り席に座ると田中君が鼻息を荒くしてやった。
「どした?もうチャイム鳴ったぞ」
「どした?じゃねぇよ!なんで山口さんと仲良く話してんだよ!?」
「ん?どういう事?」
「山口さんが男子と仲良く話してる所なんて初めて見たわ!何したんだよ?」
「えーっと、落とし物を拾った」
「落とし物?それだけであんな仲良く話してたのかよ!スゲェよ!」
田中君はまだ何か言おうとしていたが、先生が来たので渋々席へ戻っていった。
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