第8話 やっぱり着物屋さんはハードルが高い
母と食事をしてからチラシの入っていたお店に行くと
リサイクルショップとは違う、ピカピカした着物が並んでいた。
そうよね。
これが着物だったわ。
金欠の私には目に毒な金額。
「いらっしゃいませ」
20代と思われる若い店員さんに声をかけられる。
「何かお探しですか?」
マズイ。
この雰囲気は500円の草履だけ購入して帰れる感じではない。
草履はやっぱりネットで。
と思って逃げようとしたら
母がガッチリ捕まっていた。
「私は、大島紬を持ってるの」
いや、店員さんが捕まってる?
えっと、大島紬って何だ?
「今、たとう紙を購入したから」
と、言っていたけど。
目の前に「たとう紙」あるよね。
どうして会計をしていない?
逃げようと思っている私の気持ちに気がついているのかいないのか。。。
私に声をかけてきた店員さんは、次から次へと楽しいトークをしてくる。
あぁ、詰んだ。
これは、逃げられない。
でも。。。
ここのお店の着物は買えないよ。
私が欲しいのは500円の草履だけ!
そりゃあ、
お金があれば欲しいわよ!
高価な着物は、素人の私でもいいモノだってのがわかるし、
そこのデニム生地の着物とか、すっごく可愛い。
でも!でも!
今は、子供の進学でお金がかかるから買えないのよぉぉぉぉっ!
ここで大物が来たらどうしようかと思ったら、こちらも若い人だったけれど店長らしき人は、遠くからこちらの様子を眺めてた。
やっぱり高額な着物を購入しそうにないってわかるのかしら?
着物屋さんのセールスって何よりも最強なイメージがある私は
※過去にちょっといろいろあったんだけど、その話はまたの機会に。
少しホッとしたりする。
「草履、購入するんじゃなかったの?」
母の言葉に売るのを諦めた様子だった新人さん?と思われる若い店員さんの瞳がキラリと輝く。
「草履でしたらこちらを!」
うん。
わかってた、見えてたし。
そこの3万円の草履、ホントに素敵よね。
でも、私が欲しいのは500円!
どこでチラシの事を切り出そうとタイミングを見計らっていた時
ん? あの草履可愛い!
お店の奥の方に目立たないように置かれた草履が視界に入る。
「あの草履は?」
「。。。あれは、 キャンペー中の草履で。。。」
こちらが謝りたくなるくらい、あからさまにテンションが下がる店員さん。
「見てもいいですか?」
「もう、そんなにいいものは残っていないのですがどうぞ。」
500円だから正直期待してなかったんだけど、可愛い鼻緒がついた黒い草履が3足ほど並んでいた。
そして、その中の赤い鼻緒の草履に一目惚れした。
「これ、もらえます?」
見栄を張っても仕方ない。
3万円の草履は買えない。
でも妥協したというよりは、ホントに気に入ったから購入した500円の草履。
ワクワクしながら店を出る。
あぁ、早く履きたいなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます