第3話 室町時代からの使者?







  ウィラこと、新木 志苗の帰化に伴う改名の由来の話から、彼氏とうまく行っていない話へと盛大に脱線したのは、初めて本人から話を聞いたことによる、小幡の勘違いと言っていいのかよくわからないボケからの流れで広がった。


 なんとも掴み所のわからない、気だるそうな半開きのタレ目の無表情は、相変わらず彼女のマイペースを物語っているのだ。


 しかし、ウィラの赤裸々な性事情の話となれば、明らかに口角を吊り上げて笑っていたから、楽しんでいるようで何よりだ。


 このまま酒を飲み続けていけば、普段のイメージとは違うキャラクターの顔を覗かせることだろう。


 さて、ウィラが彼氏に構ってもらえず、レスが長くて干物女と化した件についてだけど、性格がキツくて性欲お化けであり、おまけに貴族の家系、末裔だけあって海外では上級国民扱いだからか、彼氏からすればおっかなくて仕方ないのかもしれないね。


 OKしたウィラもウィラだけど、彼氏も彼氏でとんでもない女に手を出してしまったという訳だ。


 うん、どちらにしても御愁傷様だね。


 おかげで酒が進むもので、もう少し日が傾いてきたら続きといきたいね。


 さっき頼んだ唐揚げ等は、あっという間にあたしらの口の中へと吸い込まれていき、お酒も進んで迷わず追加の注文をしてからも、相変わらず会話はどんどん弾んでいくものだ。


「ま、そらええんやけどな、カズサちゃん。うちな、あんたに聞きたいことがあるな」


「なんすか、名前変わっても会長は会長っすよ」


 今度はトリわさ、トリ刺をつまみながら、あたしは焼酎のストレート、チェイサーの水を交互に口へと運び、二人の会話の様子を眺めて楽しみながら、酒とつまみを味わっている。


 さて、次の演目はなんだろうね?


 つまみに合わせてウィラと小幡の二人は、日本酒をシェアしてお互いに徳利からお猪口へと注ぎ入れ、口や喉を潤しつつ燃料を入れれば調子が上がり、くるくると口が回る訳だ。


「それ、いつの話やねん! うちらもう卒業しとるわ!」


「そうっすけど、今さらフォンさんって呼ぶのもなんか変っすね」


「いや、うちのことミドルネームで呼んだん、カズサちゃんしかおらんわ! なんや、あんただけ室町時代からタイムスリップしてきたんとちゃいますか?」


「変わった幼名だったっす。元服したら普通すぎて、どう呼んだらいいかわからないっすね」


「そらうち、一応貴族の末裔やし、そら武士や公家と同いで幼名言うても……って、幼名とちゃうわ!! それと元服もちゃうわ!! カズサちゃん、はよ現代に帰ってきぃ!?」


 ああ、思った通りの演目だろ?


 さて、次は串ものでも注文しようかな───。







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