続 ドリームチーム後編 其の9  遠之 えみ作

ローンチの顔が更に醜く歪み、もはや原型を留めていないが、寧ろこちらの顔が真実の姿だろう事は明らかだった。サラリと流れる金髪は抜け落ち、不自然なくらいツルリとした白い肌は赤黒い血管が浮き出た醜い顔に変貌している。

ローンチは醜い顔を更に、最大限に誇張するとパンジーがスティックを放り投げた手首だけではなく両手首を切り落とした。パンジーの悲鳴が響き渡る中、ローンチは細かい皺に覆われている口を開いた。

「そんなものが何になる!オマエ達とはそもそも論理が違う‼」

時間の無駄だと言って ローンチは更に2本の腕を生やすと電磁波を放った。

ハレルヤと6人の弟子が一斉にスティックをかざし、電磁波を逆射させたが、これはローンチの盾にされてるパンジーを巻き込む事態に。幸か不幸かパンジーは気を失っていて最悪のシーンを見ずに済んだ。ハレルヤは弟子たちに、ローンチが新たに生やした腕を切り落とせと命令し、ローンチの眼前に飛び出した。阿吽の呼吸でフブキが上空へ、姿が見えなくなるまで飛び上がった。間髪入れずビッグデイパーが井戸から飛び出すと漆黒の雄姿を露わにした。

続いてジュピターとサクラ、ムーンとツクシが飛び出す。ロッキーたちはもう驚いていなかった。四天王が攪乱し、ハレルヤと6人の弟子たちが力を合わせてローンチの攻撃をかわしている間に、タケルとチートがナイトを救い出し、スフレは翼を一層広げパンジーの血塗れの手首を拾い上げてマーキュリーに渡した。マーキュリーはラボに取って返す。何としてもパンジーを救わなければならない。その時である。音もなく上空からローンチの頭上に真っ直ぐ降りてきたのはフブキ。

フブキは着地直前にレーザーソードを抜き、パンジーに絡み付いている腕に切り込んだ。瞬時にハレルヤがパンジーにかけられた魔術を解く。フブキはパンジーを掴んで離そうとしない腕ごと切り落とし、パンジーと切り落とした腕を抱えたまま再び上昇した。ビッグが呼応する様に後を追う。フブキが降り立ったのは基地から一番近いシェルターだった。そこには、医者のパンとタルト、タンゴが避難している。

変わり果てたパンジーの姿で状況を察したパンは血相を変えて周りにいる誰彼なく指示を飛ばした。

「俺たちに出来る事は?」 応援を申し出るタルトにフブキは「電磁波を通さないアレがあったら…ありったけ持ってきてほしい、ラボに戻っている時間がない。パンジーがこれではBrainAIの操作も難しい、パンジーと、怖がっている人々を頼む‼」 それからこいつは、と云ってパンジーに絡まる腕を引き離してギョッとした。切り落とした腕からミミズの様な細胞が現れウニョウニョ動いている。フブキは慌てて外に飛び出しシェルターの扉を閉めた。

どうやら修復しているらしい事は明らかだった。フブキはウニョウニョ動いている細胞に直接レーザーソードを浴びせたが、細胞は死なず再び動き出す。「何だ…コレは…」かつて見た事のない不愉快なモノに翻弄されてフブキの思考が鈍った時、 「フブキ!行くぞ‼」

と、声をかけてきたのはビッグだった。 「アイツを倒さなければ何度でも再生すると思う!急げ‼」 フブキが腕を抱えたままビッグの背に跨った時、シェルターの扉が開きタルトとパンが出てきて言った。 「ソイツは俺たちに任せておけ!」 と、タルト。「幸いここには大量の医療器具と勇敢な人々がいる」 と云うパンにフブキは躊躇なく頷くと 「頼む!親玉を倒さない限りこいつらの再生も止まらない‼必ず倒す‼」二人に腕を預けたフブキはビッグと共に戦地へ戻った。

総攻撃を食らっているにも拘わらず、ローンチの本体2本から繰り出される魔術と7本の腕が発する衝撃波で ついにスラッシュ、ドット、シータが力尽きて斃れた。                                                         

魔女たちの攻撃が弱まるにつれ、ローンチに近づく事が難しくなった。スピードでは群を抜くツクシとサクラでさえ隙を衝く事が叶わず、ローンチが発する魔術から身を守るのに精一杯の状態だった。そんな中、何とかローンチの魔術を遮っていたマーク、コンパスまでが弾き飛ばされた。だが、斃された二人にとどめを刺すべく2本の腕が電磁波を放つ間際 何処からともなく黒い布が飛んできてマークとコンパスの体を覆った。フブキがビッグの背に跨がり疾走して来る。これを見たハレルヤが

「ショット‼ローンチの指先だけ狙うんだ‼‼」と叫んだ。魔術を操るのはローンチだけで、ローンチ本体以外の8本腕は魔術ではない。しかも1本減って7本。

ハレルヤとショットがローンチの指先に集中して攻撃している間にロッキーがレーザーガンをぶっ放しながら果敢に挑む。この攻撃で2本の腕をもぎ取り5本になったが、すぐに再生が開始される。

やはり、ローンチを倒さなければ収まらないのだ

そして悪い事にハレルヤとショットにも疲労の色が見え始め、先にハレルヤが膝をついた。しかし、万事休すと思われたその時、スラッシュ、ドット、シータが復活の呪文で蘇った。


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