続 ドリームチーム後編 其の7  遠之 えみ作

フブキを乗せたポッドが真っ直ぐ上昇するとドローン戦隊の攻撃の矢がフブキに向けて一斉に放たれた。体当たりを仕掛けてくるドローンもある中、基地内でポッドを操作しているBrainAIは的確に情勢を読み、AI兵士をフブキの盾に使いながらポッドの上昇を手助けした。ツクシとサクラ、ショットが続き、ドローンより高い位置を確保するや、BrainAIの指示通りドローンの本体根元の通信核を狙い撃ちしていった。この攻撃でドローンの数が激減した事で、ゲート突破を狙っていたロッキーや大将たちは押せ押せのムードになり形勢は完全に逆転した。新たにドローンの投入がないと云う事はいよいよタマ切れらしいと誰もが確信した。

アンドロイドを乗せたポッドの姿は既になく、ゲート前はロボット兵士の壁で覆われ

レーザー銃を放ってくる。 「突破するぞ―――‼」フブキの号令でAI兵士がロボット兵士の壁にぶち当たり強固な壁を崩していく。徐々に、徐々にゲート入り口が見えてきた時 徐にゲート扉が動き出した。敵味方なく排除する作戦らしい。

「ゲートが閉じるぞ‼急げ‼Go!Go!Go―――‼」 ロッキーの声に全員、銃を放ってくるロボットに突っ込み蹴散らし、そこへ、ギリ間に合ったタケルとチートがドットとマークを引き連れて合流し、間一髪、戦艦になだれ込む事ができた。

ローンチと云うバケモノにはショット一人では歯が立たないと考えたハレルヤの意図である。


戦艦の中は全ての照明が落とされ暗闇だが、フブキたちの暗視カメラ搭載の特殊ゴーグルはここでも役に立った。設計書があったとは云え、やはりパンジーの手柄である。

フブキたちは内部構造に詳しいイニシャルEチームの後に続いた。戦艦の中は船の動力音以外ほとんど無い。

闇は姿を隠すには好都合だが、それは敵にとっても同じ事でアンドロイドがどこに潜んでいるか知れないリスクと隣り合わせである。

狭い通路をグネグネ曲がり闇の中を歩いていると唐突に、青白く光る部屋が前方に現れた。

「アンドロイド生成ラボだ。レディーたち、言っとくが相当気持ち悪いぞ、ドロイドもお待ちかねだ」

ロッキーが言った通り入口手前で激しい襲撃が始まった。 しかし、殆どがレーザーガンだったのでフブキたちが装着していた改良型ニューフォームは撥ね返す構造を持っている。

逆にこちらが発するリチウムの改造ガンとレーザーソードは効果的に、アンドロイドを脳天から真っ二つに切り裂いた。 

ラボには、アンドロイドを操るAIの指令官が複数見られた。そのAIを自在に操るローンチの姿はなかったが、奥まった所に透明で巨大なタンクがあり、そこから無数のチューブがクモの巣状に張り巡らされていた。その時、いきなりフブキの右腕を掴んだ者がいた。サクラだった。フルメットで表情は読めぬがサクラの手が微かに震えている。サクラが指さしたのは、巨大タンクのその先の極小タンクである。極小タンクは無数に広がり溶液に浮いているのは脳だった。 巨大タンクはその為の元素水と云える。

サクラじゃなくてもこの光景はかなりインパクトがある。フブキですら寒気を覚えた。これだけの脳を集めたと云う事は、、、脳だけを取り出して、以外は、スペースデブリとして廃棄してきたのだろう。

「チッキショ―――‼‼」  ロッキーがAI指令官に向けてぶっ放すとラボにライトがともり同時に全方角から銃弾が飛んできた。

「一斉にタンクを狙え‼‼」

フブキの号令で、全員ニューフォームが銃弾に耐えている間に微量のプルトニウムを含んだ銃に差し替え―――3―2―1Go‼で標的にぶっ放した。

巨大タンクは粉々になり、極小タンクのチューブを巻き込みながら150トンはあると思われる溶液が滝の様に流れ出した。破壊された極小タンクは魚の内蔵に似た脳を撒き散らす。それだけではない、プルトニウム銃の破壊力は絶大でラボ内の機械を破壊し尽くすだけではなく戦艦本体に大きなダメージを与えた。

そんな状況でもドロイドたちは逃げない。ローンチの指令通り死ぬまで攻撃を止めない。フブキたちは これじゃ脳無しのロボット兵士の方が気が楽だと思う程だった。

飛び散る脳ミソを浴びながら 「こっちだ!ローンチはいつもこの上の操舵室にいる!」と云うロッキーについて行く。操舵室は船の最上階である。かなり数が減ったとは云え、途中襲ってくるドロイドを倒しながら階段を駆け上がる。

そして遂に辿り着いた操舵室の中央にモニターで見たローンチと思われる男が立っていた。周りを6体のドロイドが囲っている。 ロッキーが大声で言った。「みんな、アイツの目を見るな!」

「…ウルサイ奴だな、まあいい、フブキ君よく来た‼よく来たがここまでだ」

ここでフブキは迂闊にも一歩前に出てしまった。すかさずローンチが手をかざした途端フブキは飛ばされ壁に激突し、素の豚の正体が露わになった。驚いたのは事情を知らないEチームの4人である。暫し呆然とするEチームに6体のドロイドが嘲笑う。どうやらこの6体のドロイドは今迄のドロイドより進化している、と、誰もが気付いた。

「豚に銃は似合わねえ、これは俺が…」 と、フブキの銃に手を伸ばそうとしたドロイドの体が逆に宙に吊り上げられた。ショットである。

「ほほう!…こんな所にもお仲間がいたとは…」 穏やかな話しぶりとは程遠いローンチの険悪な顔が露われた。そこへ、ロッキーが命がけのタックルを食らわし大将たちも果敢にローンチに挑んでいった。「魔術を使う隙を与えるな!攻めろ!攻めろ!攻めろ―――‼‼」 ロッキーが吠える。ショットはこの隙にフブキを戻し仲間2人と前面に立ちローンチに魔術を放った。咄嗟に身をかわしたローンチの代わりに3体のドロイドが粉々に崩れ落ち、これを見た残り3体が逃げようとしたところを四天王のレーザーソードが閃いた。

少々分が悪いと考えたローンチは姿を消すとゲートへ向かった。ところが、ローンチは完全に姿を消す事は出来なかったのである。

Eチームのチートとタケルが一旦基地に戻ることを知ったハレルヤは、ドットとマークの2人の元へ行き、魔法の粉末を持ってEチームと共に戦艦に乗り込めと命令していた。強度な異臭が特徴のこの粉末を浴びた者はどんな姿になろうが姿を消そうが臭いを消す事はできない。臭いを追えばいいのだ。ただ、これには弱点もあってフブキに託す事は危険も伴う。ショットに託せなかったのはやはり、ショットの性格によるところが大きい。そこへ不幸中の幸い、チートとタケルが一旦撤収すると聞いて迷わずドットとマークに託した。フブキの作戦に水を差す行為とも思えたが相手は殺戮の使者である。遠慮している場合ではない。

魔法の粉末は魔法使いにのみ作用する。しかし、魔女以外の者が万が一浴びてしまうと即死するほどの猛毒である。臭いも魔女だけが嗅ぎ分ける念の入れようだ。





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