続 ドリームチーム後編 其の6 遠之 えみ作
ナイト、チート、タケルの3人は130年生き続けているロッキーと違い
実年齢は27~8の若者だ。3人ともゲリラ戦で負傷したが、当時はまだ数人生存していた科学者たちの手に依ってアンドロイド化された。クローン化も検討された様だが過去に3年以上生存した成功例がなく、かかる時間も圧倒的と云う事で回避された。手術は成功したがしかし、その僅か10日後のゲリラ戦で科学者と呼べる者は全員その場で殺されるか連れ去られてしまった為口述機能は手付かずのままである。
基地内はごった返していた。パンジーが過剰にAI兵士を搬入したり、お手伝いのワゴンを寄越したりしたせいだが、BrainAIの的確な指示で程なく渋滞は解れた。
整理がついた途端、すかさずワゴンが全員の胸にワッペンを張り出した。いざという時の見分けに必要と云う事でパンジーが急ごしらえを思い付いたらしい。
フブキたちはP(Pyg)のイニシャル。四天王はH(Hors)スフレはO(Owl)
ハレルヤと6人の弟子はWW(Witch&Wizard)
そしてロッキーたち4人のイニシャルは(Earthman)のE。
ロッキーは正直なところ腹の中で「これじゃローンチのマネじゃねえか!」と思ったが実際のところ、フブキたちの真の姿 デリヌス星人の正体を、この時点ではまだ知らずにいたのでハレルヤと6人の弟子以外のイニシャルが不可解だったが、何せ、天才を自負しているパンジーだから……と云う事で一旦腹に収めた。
ワゴンが景気づけの果実酒を振る舞い始めたが、当然ロッキーたち4人は飲める仕様になっていない。一応ヒト型だが頭の部分はフルメットで表情を覗く事は不可能である。そこはデリヌス兵士と、敵のロボット兵士、アンドロイドとも共通した血の通わない無機質さを感じさせるが ひとつ大きな違いがある。彼等はアイデンティティを持ち合わせている事だ。
その事実を、ワゴンが無造作に配ったグラスを持て余し、棒の様に立ち竦んでいる4人の気持ちを誰よりも敏感に感じ取ったのはムーンだった。「味わえる日が来る事を信じて‼」 ムーンが慈愛を込めてロッキーたち4人のグラスに鈴の様な音色を重ねた。そして、「必ず勝利しましょう‼」と力強く言った。すぐに事情を飲み込んだ戦士達が4人の周りに集まり静かにグラスを掲げた。
フブキはここで、予てより練っていたもう一つの計画を明かす事にした。
「敵は死に物狂いで突入して来るだろう。ロボットとアンドロイドは何とかなるとしても厄介なのはローンチだ。姿を消されたら俺たちは手も足も出ない。恐らくローンチはドサクサに紛れて単身基地に乗り込んで来る筈だ。そこでだ、ハレルヤ!井戸の外で網を張っててくれ。コンパス、スラッシュ、シータはハレルヤと共に、マークとドットはAI兵士と共に井戸の抜け道の地下を守ってくれ。ショットは俺たちと共にポッドで外に出る」 ここで歓声があがった。ショットである。ショットは淡々としている仲間の背中をバシバシ叩きながら小躍りして喜んでいる。 「ショット!遊びじゃないんだ‼」と、ハレルヤに諫められて引き下がったが顔はニヤついたままだった。
これを見ていたナイトは密かに、益々ショットに好感を抱いていた。
「準備完了」 BrainAIの乾いた音声が流れ 一同は一斉に動き出した。
フブキはポッドに向かう間際ハレルヤとハグを交わし、緊張して顔が強張っているコンパス、スラッシュ、シータに向けて敬礼した。
先ず、戦艦に突撃をかけるのはジェットエンジン搭載の武力に特化した一万体のAI兵士である。フブキたちはこの兵士を盾に紛れ込み敵の戦艦に乗り込む。
巨大な戦艦の中でローンチを特定するのは容易ではない。まどろっこしいがアンドロイドを一体一体潰していきながら、アンドロイドを生成している場所までEチームに案内してもらい壊滅させる。 そもそも戦艦に近づくこと事態容易ではないのは織り込み済みだが こちらとしては敵を圧倒する数を武器に突破するしかないのだ。
ゴーグルで距離を測ると戦艦は20キロ先である。ドローンとポッドに乗ったアンドロイドが戦艦をぐるり取り巻いている。前回と同様ゲート前はレーザー銃を構えたロボット兵士の壁で覆われている。
フブキたちは三手に分かれ多角的攻撃に踏み切った。右手からHチームが攻め、左手からEチーム、フブキはツクシとサクラ、スフレ、ショットを率いてドローン攻撃の激しい上部へとまわった。
AI兵士に紛れながら前進するフブキたちに敵は容赦なくぶっ放してくる。特に、ドローンが上空から放つ銃弾は比喩の如く雨あられである。資源は枯渇寸前のはずなのにだ。フブキたちの護衛を兼ねたAI兵士に変化が表れ出したのは間もなくの事だった。急速にスピードが減速して動かなくなった兵士の姿に、銃弾の中身は明らかに ロッキーが言った砂か灰に違いなかった。兵士の内部に着弾した銃弾は砂と特殊な液体共に弾け、内部に密集しているアース線にへばりつき通信を絶つ仕組みだ。それに加え、敵にはまだ硫酸銃が残っていたらしく内側から溶けていく兵士も現れだした。激しい敵の攻撃でなかなか前進できず一進一退を繰り返す中 タケルとチートのポッドが破損した。AI兵士の護衛で一旦基地に戻った後、ポッドを替えて2人が戻るまで10分はかかる。
この場面で2人の脱退は大きいと考えたフブキは、上空から間断なく激しい攻撃を仕掛けてくるドローンに向けて逆攻撃を仕掛けようと目論んだ。
「ツクシ、サクラ、ショット、護衛を頼む‼」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます