続 ドリームチーム後編 其の4   遠之 えみ作

突如、モニターに映し出されたのは巨大な宇宙船である。

レーダーにも引っかからず接近を許した事になる。これもロッキーが言った

ウイルスか… 考えている暇はない。


宇宙船下部の一部が開き大量のロボットとドローンが吐き出される。

ロボットの後方に兵士を乗せた小型ポッドが控えているのが見えた。

「ポッドに乗っているのがアンドロイドだ」ロッキーの言う通り、ロボットは錆びた鉄屑を接ぎ合せただけの粗末な代物だ。アンドロイドは錆びていないだけマシと云えるが、やはりパッチワークばりのツギハギである。にも拘わらずわざわざ左胸にRの刻印とは。

ドローンが上昇するとロボットも一斉に動き出した。

「来るぞ‼パンジーAIのフルスロットルだ‼‼」 「分かってるわよ‼‼」 

パンジーはゲート前で敵を迎え撃つ一万体のAI兵士に加え、待機させていた10万体の兵士を起動させフォワードで戦う兵士のバックを二重三重と固めていった。

恐らく兵士の数だけならデリヌス勢の方が圧倒的優位に立つ筈だったが、やはり

フブキが懸念した通り武器には確実な差があった。ドローンがその一つである。

デリヌス兵士の武器と云えば主にレーザー銃だ。あとはフブキたち大将が身に付けているレーザーソード。敵のドローンが高位置から銃弾をぶっ放しデリヌス兵を攪乱している隙にロボットが銃で襲い掛かって来る。しかも、これがただの銃ではない。

銃を浴びた兵士が次々ドロドロに溶けていくのだ。

「硫酸銃できたか…厄介だな…」 次々とドロドロに溶けていく兵士の姿がモニターに映し出され フブキは臍を嚙む思いだった。ここにも武器の差が……

「奴らの武器は硫酸だけじゃない‼ 俺たちが外に出て奴らの指令系ポイントをキャッチして送る、いいか! ポイントをを狙え‼」

フブキが止める間も無く4人は地を滑る様に走り去った。これじゃ一体誰の戦いなのか分からない。ここで唯一役に立ったのがゴーグルに内蔵されていた透視カメラだった。まさかここで役に立つとは思わなかったがロッキーには解かっていたのだろう。

300年前の武器と言ったマーキュリーの懸念がここでも……パンジーは300年前の設計図を基にBrainAIを創りAI兵士を大量に生み出したが、武器に関しては鈍感過ぎた。いや、パンジーを責めるのは酷だ。何でもかんでもパンジーに頼り切った我々こそに問題がある。フブキは思った。鈍感なのは俺たちだ、と。

戦闘の主戦場はゲートより僅か一キロ。何万体ものAI兵士が二重三重になって敵の侵入を阻止しているが ドロドロに溶かされた兵士の数も尋常ではない。これらは全てスペースデブリとして任務を終えるのだ。

「みんな‼聞いた通りだ‼後を頼む‼」 フブキはポッドに乗り込むとロッキーたちの後を追った。ポッドはフッ素樹脂を加工した物で硫酸でも簡単には溶けない筈だ。こうなる事が解っていたらAI兵士の表体も加工しておくべきだったが、フブキはここでも脇の甘さに直面していた。

フブキは、ロッキーたち4人のポッドがドローン攻撃を巧みに交わしながら宇宙の中を縦横無尽に飛び交う中に飛び込んで行った。


ビッグから、目に見えて敵の数が減っていると通信が入ったのは戦闘から4時間後の事だった。デリヌス兵士が10万体以上溶かされたと思うが、フブキとロッキーは敵のダメージの方がはるかに大きいと踏んだ。後方に控えていたアンドロイド軍団は遂に一歩も動く事なく宇宙船に撤収している。一旦引き返して再び攻撃を仕掛けるプランをローンチが練っていると思われる。

フブキとロッキーは、次の攻撃は間違いなくアンドロイド軍団だろうと考えた。

限定的な資源しか持たないローンチは資源削減の為にロボットかアンドロイドか二者択一を迫られて、一億分の数パーセントほど自己管理が可能なアンドロイドを選ぶ。敵が目の前にいても指令がなければ指一本動かすこともできないロボットに比べれば敵か味方か判断のつくアンドロイドの方が使えるだろうからだ。


硫酸の次の武器はどんなものか。 基地内に戻ったフブキとロッキーたちは大将を交え作戦会議を開いた。 「砂か灰だろう、微粒の砂は僅かな隙間でも入り込んできて指令系統を遮断する。起動しないロボットはただの鉄屑だ。そこでアンドロイドの出番って訳!」ロッキーの話によるとロボットもアンドロイドも宇宙船の中で製作されている。ロボット製作はアンドロイドが仕切り、アンドロイド製作はローンチが殺した脳科学者の脳を司るアンドロイドである。そして、このアンドロイドを意のままに操っているのがローンチだ。全ての始まりはローンチ。ローンチを潰さなければ先はない。

「とにもかくにもローンチだな!」 フブキがロッキーに顔を向けたその時警報が鳴り響き 基地内の巨大モニターが一斉にフラッシュした。

「やあ!諸君」 ローンチだった。



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