潤子は高校のコーラス部の先輩だった。
クライングフリーマン
潤子は高校のコーラス部の先輩だった。コーラス部には、男子が3人しかいなかった。3年生の先輩。2年生の先輩。そして、私だ。
中学の時の先輩に勧誘されて無理矢理入部した。潤子は2年生の先輩だった。3年生は、男子も女子もすぐに来なくなった。卒業だから、受験勉強に専念する為だ。2年生の男子の先輩は、優しかったが、すぐに退部した。
毎日、練習に参加した。文化祭がやって来た。私は英語部とかけもちしていた。それが、悪かったのか、潤子は誤解していた。本番で「帰れ」と言われた。
中学のコーラス部では、男子6人参加していたのに、5人で文化祭に参加、私だけ外された。ショックだった。その苦い想い出が、すぐに蘇ってきた。高校のコーラス部に入部したのは、「やり直せる」と思っていたからだ。
「練習だけ参加していると思っていた。男の声が1人入ると濁るから。」その言葉は今も覚えている。
じゃあ、口パクでも良かったのに。部長になっていた潤子の命令は絶対だ。絶望した。
大学に入った私は、潤子が地元の劇団に入った後、東京の劇団に入った、と聞いた。
手紙を書き、休みに上京した私は会って貰った。「そんな甘いものじゃないわ。」
後になり、地元の劇団に入ってから上京し、潤子と同じ道を辿った私。
潤子は、テレビに1度だけ「チョイ役」で出たきりで、叔母の家に居候していた潤子の引っ越し先は分からず仕舞いだった。風の噂で亡くなった、と聞いた。
私も、芽が出ないまま、いや、「芽を摘まれた」まま演劇の世界から遠ざかり、結婚も出来ず、親の介護に明け暮れて、持病の多い体を欺し欺し使いながら生きている。
小説を書き始めてもう3年。夢の中で言えた台詞は、もう言えない。
後何年、生きられるかな?耐えられるかな?
私の結末は、誰も知らない。
潤子は高校のコーラス部の先輩だった。 クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます