第4話

 いよいよ、入学式当日。

 お父様が一緒に式に参加してくれる事になった。

 入学式だけ、家族が学園内に入るのが許可される。


 私は真新しい魔導師風の制服に袖を通し、満足げに入学式に向かった。私の制服の色は白。毎年、試験があり合格すると制服の色が変わる。

 白から桃色に、桃色から薄緑に。最後に魔法博士の試験を受け合格すれば、濃い紫色の制服を貰える。

 これは、学園の制服ではなく魔法博士の制服となり、仕事着になる。


 クラスは、A,B,Cクラスとあり、無属性はCクラスだと魔法学園の本に書いてあった通り、私はCクラスだった。

 でもまあ、合格した生徒は皆、白の制服だから同じよ。


 学年別にクラス事に並んで座る事になった私は、Cクラスで一番前だ。

 思ったよりCクラスが多い。というか、ほとんどCクラスみたいなんですが……。


 届いた心得の本には、クラス分けの事も書いてあった。

 一年次は、Aクラスの者は居ないと言う。

 Aクラスの者は、いても一人か二人で少ないので、Bクラスと同じ教室になる。

 Cクラスが多く、同じクラスであっても3クラス以上に分かれると書いてあった。

 まあ教室に入りきらないので、3クラスになるって事よね。


 そして、試験を受け二年次に上がる事になるが、この試験に落ちる者もいるわけで。その者はもちろん、白の制服のまま。

 ただし、Dクラス所属となり半年内に再試験を受け合格しなければ、退学になるという。

 三年次に上がる為には必ず合格しなければならず、ここで不合格となると退学となる。つまり、三年次にはDクラスは存在しない。


 そして、問題の卒業試験。これに合格すると魔法博士になれる。この試験、実は次の年にも受けられるらしい。

 この学園には、留年組の四年次が存在した。クラスは一クラス。

 もちろん、魔法博士になれなくとも学費は卒業後、払っていかなくてはいけないので、留年組は必死だろう。


 実は、魔法博士になれるのは卒業試験を受けた内の8割だという。

 しかも、毎年2割の者が合格できず去っていく。

 最終的に、入学時の半数しか魔法博士になれないと言うのだから気を抜けない。


 他の学年の者を見ても令嬢は少なかった。

 もっと多いかと思ったけど、驚きだわ。まあお嬢様育ちには大変かもしれないわね。

 何せ、魔法博士がお貴族様と言っても貴族として扱うと言う事だけらしいから。お金を稼げなければ、使用人も雇えない。

 だから魔法博士になっても親元から通うのが一般的で、爵位を貰う為と言うよりは、仕事をする為に魔法博士になる。


 この世界の貴族令嬢は、仕事と言えば夫の補佐。自分自身で仕事をする者は稀である。

 文句を言われずに出来るのは、この魔法博士ぐらいだろう。


 私は、結婚せずに暮らしたいと思っている。そうよ。

 結婚して、万が一に子供が成人する前に夫に死なれたら再婚しないといけなくなる。絶対そうしなければならい訳ではないけど、親族にクドクド言われるに違いない。


 どちらにしても、私が嫁ぐとなれば子爵家以下の貴族になるだろう。子爵家に嫁げれば、万々歳よ。

 けど私は、貴族の生活は好きじゃないのよね。

 正確に言えば、つまんない!


 婦人になってもドレスを着てお茶会をする程度。

 そもそも男爵家や子爵家は、実家の家の手伝いをしている者が多い。お父様もそう。

 だから夫の手伝いなど何もないのよ。

 子育てだって、手のかかる時期は乳母が面倒を見てくれる。

 しかも最悪なのが、親族の集まり。

 婦人同士で牽制しあうらしい。あぁ嫌だ。本家でないものは、大変なのよ。

 と言うのを継母を通して知った。


 ご存じの通り、次男以降は男爵、子爵になっているのだから本家の者以外は、ほとんどが男爵家と子爵家。

 でも驚く事に、私の本家は侯爵家だったのよ。

 だからお父様の代で、食いっぱぐれる事はないでしょう。


 ちなみに、男爵になりたくない次男坊が、結婚せずにいる事もあるという。

 私の場合、独身でいても子爵のままでいられないからね。頑張って卒業しなくちゃ!


 なんて考えていたら、入学式はあっという間に終わっていた。

 今日は授業はないので、学園内の見学の後、お父様と家に帰るのだった。


 「ファビア、大丈夫か? みんな4つ程年上のようだが」

 「問題ないわ。通わせてくれてありがとう。お父様」


 ポツンと独りぼっちになるのではと、心配するお父様。

 まああの入学式を見ればそうよね。

 中学生の中に小学生が一人混ざっている感じよね。って、これはお父様には通じない話だけど。


 お父様が心配する中、私の学園生活が始まったのだった。

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