第3話:未来での出来事。

「たとえば私が自由に時代を行き来出来るなら、あなたの亡くなった奥さんが

生きてる時代まで遡って、そのまま奥様を連れて未来まで行って未来の医療技術

で治療して奥様をまたこの時代に戻って来れば、あなたの奥様の命は救えるかもしれません・・・かもです・・・」


「でも、それは理論上のことであって、実際はタイムリープするたびに時空に

歪みが生じて時間誤差が発生します」

「バタフライ効果って言って力学系の状態にわずかな変化が与えられると、その後

の系の状態が大きく異なってしまうって言われています」


「だから、失敗に終わる可能性があるんです」

「結局、定められた運命、歴史は変えられないのかもしれまん」

「って言うか、私は諦めきれなかったから過去に戻っちゃいましたけど・・・」


「複雑なんですね・・・僕の頭じゃ理解でいそうにないな」


「ごめんなさい、お役に立てなくて・・・お気の毒です」


「いいんです、なんでも思いどおりになるなら苦労はしませんから」

「お気持ちだけありがたくいただいておきます」

「今の僕は何もしたくないし、何もする気がしないんです・・・」


「あの・・・図々しいとは思うんですけど、住居が見つかるまで升田さん

ちに置いていただくわけには?」


「お好きにどうぞ」


「升田さん、ヤケになってません?」


「どうでもいいんです・・・まじでどうでも・・・」


「私と升田さん、他人ですけど私、心配になってきました」


「なんでですか?」


「だって、升田さん今にも死にそうなんですもん」


「ああ、それもいいですね・・・そしたら楽だし、妻のところにも行けるし」


「なに言ってるんですか?・・・生きたくても生きられなかった人もいる

んですよ」


「・・・・・・」

「分かりました・・・私、当分ここに居て、升田さんの面倒みます」


「なに言ってるんですか?」


「だって、心配なんですもん」


「会ったばかりでしょ?・・・お節介ですよ・・・珠代さん、あ、丸井さん」


「珠代でいいです」


僕のトイレに現れた未来から来たって「珠代さん」って女性。

僕とはなんの関係もないけど、事情が事情だけに僕の家に居座った。

まあ、行くところもないだろうから、好きにしてくれていいけど。


で、なんやかや言って、珠代さんは朝食を作ってくれた。


「私ね、夫が科学研究室で働いてて、私もそのラボで夫の助手をしていたの」

「その夫の研究が訳ありなモノで・・・その開発した装置が政府に没収されたの」

「それでね、その装置、誤作動をお起こしちゃって・・・」

「あとは説明したとおり・・・人類のほとんどが消滅しちゃったの」


「だから夫にも私にも責任があるの」


「ご結婚さなってるんですね」


「してたって方が正しいかな」

「夫はそんなもの開発したせいで、秘密を守るために誰かに殺されたの」

「私も夫の助手をしてたから誰かに狙われてるみたいだったけど」

「夫以外にその装置のことに詳しいのは私だけだからんね・・・」


「まあ、事態を阻止することと、そこから逃げることも兼ねて私タイムリープ

に立候補したってわけ」


「そうなんですね、ご主人お気の毒です」


「升田さんと私、お互い似たような境遇ですね」

「まあ、いいんじゃないっですか?明日は明日の吹くって言いますしね」

「タイムリープしておいて、こんなこと言うのはおかしいかもしれませんけど

過ぎたことはもう戻りませんから・・・」


(珠代さん、強い人だな・・・なんてポジティブ・・・・)


「さ、食べましょ・・・お腹が減ったら余計、動く気しませんよ」


美味かった・・・珠代さんが作った朝食・・・妻が作った朝食も美味かったけど

この朝食は今まで食べた朝食の中で一番美味かった。


米のメシがこんなに美味いなんて・・・それに味噌汁・・・涙が出た。


「僕・・・こんな美味いメシ、生まれてはじめてです」


「たくさん食べて元気ださなきゃですよ、角彦さん」


つづく。

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