第2話:珠代さんはお節介。

「驚かないでくださいね、実は私、未来から来たんです」


「は?・・・今、未来って言いました?」


「はい・・・未来です・・・今から50年先の未来から・・・」


「いきなりトイレにいるわ、未来から来たって言うわ・・・僕になにか

恨みでもあります?・・・そんなに僕を困らせたい?」


「そんなつもりありません・・・だから事実だって言ったでしょ?」


「だって、そんなことあります?・・・未来ってことは時空を超えて来たって

ことでしょ?」

「ありえないですよ、そんなこと」


「今の時代の人には信じられないことかもしれませんけど、50年先の未来

では科学も文明も進歩してるんですよ」

「いろんなものが開発されてタイムリープも可能になってるんです」


「タイムマシンとかに乗って時間移動したりはしないんです」

「人がひとり入れるくらいのドームから人間だけを時空間に送り出す方法が

とられます」

「本来なら私は、もっと先の時代にリープする予定でした」


「あなたの家のトイレじゃなくね」


「タイムリープする時、計算どおりにはいかない微妙な誤差が生じるから

この時代に来たのも、きっとそれが原因だと思います」


「そんなにアバウトなんですか?」


「タイムリープできるとは言え、どうしても完璧ってわけにはいかないんです」

「でも、ずれた時代にリープしても進んだり戻ったたりの微調整はできます」

「ただ、私のタイムカウンターが故障してしまってるので今は無理なんです」


「なるほどですね・・・そうなんだ・・・50年先?って・・・」

「でも、目的はなんなんです?」


「それですけど、私たちの未来は世界の人口のほとんどの人がある実験によって

消滅したんです」

「私はその実験をやめさせるために警告にやって来ました」

「実験っていうのは核兵器よりも恐ろしい生き物だけを消滅させてしまう爆弾の

開発です」


「核兵器?・・・よりも恐ろしい?」


「そうです、いつの時代もそうだったようにね・・・そういう物は開発される

んです」


「すいません・・・葬儀から帰って来たばかりで、その話はキツいです」

「とりあえず、丸井さんはここにいていいですから・・・ちょっとだけ寝かせて

もらえませんか?」


「あ、どうぞ、私にお構いなく・・・私も疲れたので寝かせていただきます・・・」


ってことなんだそうだ・・・それは、にわかには信じられない話。

絵空事のような話を真剣に聞く元気は、今の僕にはなかった。


どのくらい寝てたんだろう・・・目を覚ますと僕の横に珠代さんがいた。

あ〜これって夢じゃなかったんだ・・・そう思った。


「おはようございます・・・よく寝てらっしゃいましたね」


「すいません・・・今、何時ですか?」

「そこのベッドの横の時計だと、今は朝の7時10分です」


「あ〜僕あれからずっと寝てたんですね」


「疲れてらっしゃったんですね」

「あの・・ところで葬儀っておっしゃってましたけど・・・」


「ああ、妻を亡くしましてね・・病気だったんです」

「今の医療技術じゃ治せなくて・・・」


「そうなんですね・・・お悔やみ申しあげます」


「はあ・・・ありがとうございます」

「あなたは?珠代さんは少しは寝たんですか?」


「はい・・・目的の時代にタイムリープできなかったですから」

「慌ててもどうしようもないですからね」


「そうなんだ・・・その目的の時代には行けないんですか?」

「どの時代にもいけません、それに50年先の未来にも帰えれないんです、

腕のタイムカウンターが故障してるので無理なんです」


「ってことは?・・・」


「ってことは私は一生この時代で生きていかなきゃいけないってことです」


「たとえば私が自由に時代を行き来出来るなら、あなたの亡くなった奥さんが

生きてる時代まで遡って、そのまま奥様を連れて未来まで行って未来の医療技術

で治療して奥様を治療してまたこの時代に戻って来れば、あなたの奥様の命は救えるかもしれません・・・かもです・・・」


つづく。

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