トイレの珠代さん。
猫野 尻尾
第1話:見知らぬ女。
その日は亡くなった妻の葬儀の日だった。
僕の名前は「
つい二日前に妻を病気で亡くしたばかりだ。
あまりのショックで放心状態のまま火葬場から帰ってきた。
結婚して三年目、家を買ってこれから幸せになろうねって言ってた矢先、
妻は聞いたこともないような難病で治療虚しく亡くなった。
あまりの突然の出来事に、ずっと思考が回らない。
もう、ただただ義務的に葬儀に参加していたようなもの。
どんなに辛くても悲しくても現実からは逃げられないのが現実。
夢も希望も失った今の俺は抜け殻状態でなにもない。
どんなに辛くても悲しくても現実からは逃げられないのが現実。
精一杯の気持ちを抱えて火葬場から帰って用を足そうと僕はトイレに行った。
で、なにげにトイレのドアを開けた・・・。
そしたら・・・・「うそ?」
一瞬自分の目を疑った。
そこに見たことない女の人が便座に座ってこっちを見ていたからだ。
「あ、すいません・・・ごめんなさい」
僕は思わずトイレのドアを閉めた。
え?僕はなにを焦って謝ってるんだ?僕んちのトイレじゃないか?
「あのすいません・・・なんで僕んちのトイレに見ず知らずの女性が
いるんでしょう?」
「あ、すいません・・・はじめまして、予定外でこんなところに出ちゃった
みたいです」
「私もどこに出るのか分からなくて・・・」
「なに言ってるのか、いまいち分からないんですけど・・・」
「勝手にトイレ使わせてもらってたわけじゃないんです」
「あの、つかぬ事をお伺いしますが?」
「ここ・・・西暦何年でしょうか?」
「腕のタイムカウンターが壊れちゃって・・・」
「2024年ですけど・・・だよな?」
「ああ・・・だいぶ過去に来ちゃったみたいですね」
「ますます分かんないんですけど?」
「すいません・・・トイレから出て、ちゃんとご説明しますね」
「出てもいいでしょうか?」
「ああ、どうぞ・・・」
で、トイレから出てきた女性・・・歳は見たところ僕とさして変わらなそう。
一目見て美人だって思った。
髪は、なんて色なのか分からないけどショート。
あとで調べたらホワイトピンクベージュたらって色だってことが分かった。
そして車屋さんが着てるような作業服「つなぎ」はみたいなオレンジ色の
服を着ていた。
「ごめんなさいね、何から話せばいいのかな?」
「何から聞けばいいんでしょう・・・って言うか今日はいろいろあって」
「僕、疲れてるんですけど・・・」
「ああ、そうなんですね、そんな時にお邪魔してすいません」
「これって不可抗力ってので私にもどうにもならなかったんです」
「今からお話することはきっと信じられないようなことだと思いますけど
すべて真実ですから・・・」
「立ち話もなんですから、どうぞソファにでもおかけください」
「それじゃお言葉に甘えて・・・」
その女性は遠慮会釈なくソファに座った。
「その前にあなたは?・・・あなたのお名前を教えてください」
「私「
「真珠の珠に時代の代って書いて、
「珠代さん?・・・僕は「
升はお酒の升に田んぼの田、名前はカドの字に彦は・・・彦星の彦です。
「はじめまして升田さん」
「驚かないでくださいね、実は私、未来から来たんです」
つづく。
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