第8話
それから僕たちは譲ってもらった席について、昼食を食べることにした。
各々違う料理を買った。僕はカレーで直人君は、生姜焼き定食。遥は肉ごぼう天うどんだった。
隣で遥が食べているところを見ると、男だとわかっていてもドキドキするくらい可愛い。僕はそのドキドキを紛らわす為に話を振った。
「そういえば、遥は部活で怪我したって言ってたけど何部に入っているの?」
先程部活で怪我をしたため、病院に行ったということは聞いていたが、何部までかは聞いていなかった。
「陸上部に入ってるんだ。種目は長距離だよ。」
なるほど、ならば怪我というのは足のことなんだろう。
「さっきは言わなかったんだけど佐倉君と揉めてた子も陸上部なんだよ。名前は赤崎真理さん。」
なんと、先ほど僕にやたら突っかかってきたツインテールの子と知り合いだったようだ。
そういえば一緒にいた子に真理って言われてたな。
「なんだ遥のダチだったのかよ。あいつ部活でもあんなつんけんしてんのか?」
「いやそんなことないよ。明るい子で友達も多いみたいだしね。」
えー、じゃあなんで僕あんなにキレられたんだよ。
「佐倉が出合い頭にセクハラでもしたんじゃないのか?」
水城君が昼食を食べ終わり口を拭きながら言った。
「いや、しないよ。僕をなんだと思ってるのさ。」
「でも、お前出合い頭に求婚はしてたぞ。」
どうやら直人君も僕に非があると思っているらしい。
まだ出会って二日目だというのに僕のイメージは彼らの中でどうなっているのだろうか。今度問いただしてやろう。
「ちなみに一緒にいたあの子は陸上部じゃないの?」
「ううん、違うと思う。見たことないしね。」
どうやら彼女は赤崎さんの部活仲間ではなく、クラスメイトなのだろう。あわよくば遥に仲介してもらってお近づきになろうと思ったが無理そうだ。
「ところで二人は部活しないの?」
ちょうど部活の話になったので、おそらく運動神経がいいであろう二人に聞いてみる。
そういえば、彼らは昨日も学校が終わり次第すぐ帰っていたようだが。
「オレは入る気ねぇな。筋トレする時間減るし。ウエイトリフティング部でもあったら考えるんだけどな。」
「俺も高校では部活に入るつもりはない。」
高校では?中学では何かしていたのだろうか?
「えっ!?水城君陸上部に入らないの!?」
隣に座っていた遥が驚いた様子で大きな声を出した。どうやら水城君も陸上部だったみたいだ。
「なんだ遥、俺のこと知ってたのか。」
「うん、種目は違ったけどね。だっていっつも表彰台乗ってたし。それに、全国大会
も行ってたでしょ?」
「ほぉ、眼鏡君のくせにやるな。高校でもやればいいじゃねぇか。」
珍しく直人君も褒めている。確かに全国大会はすごい。なんで高校では入らないんだろう。
「まぁ、簡単に言うと飽きたからだな。」
思ったよりも単純だった。
「勿体ないなー。水城君うちの地区では有名だったのに。」
「それが嫌なんだがな。中学の時は知らないやつに話しかけられてうんざりしてい
た。」
なるほど、飽きたというのは建前であって、どうやら本音はこっちらしい。
「目立つのが嫌って感覚は、オレにはよくわかんねぇな。」
「そりゃそうでしょ、いつも上裸で歩き回ってるんだし。」
あれで目立つなっていう方が無理な話だ。
「まぁ、残念だけど嫌なら無理強いはできないね。来週から部活勧誘が始まるみたいだから気が変わったら行ってね。」
そういえば昨日変えるときに職員室でちーちゃんが部活勧誘がどーたらこーたら話していた気がする。部活に入る気がない僕としては関係ないが。
「てゆうか、次体育だろ?早めに着替えといた方がいいんじゃねぇか?」
そうだった!次の時間は女子と合同で行われる授業の一つ、体育だった!
「ほらみんな何座ってるのさ!早くしないと青春は待っちゃくれないよ!」
「佐倉君って女の子が絡んだらいっつもこうなの?」
「ああ、コイツと同じくらい馬鹿になる。」
「いや、オレもここまでバカじゃねぇだろ」
失礼な。健全な男子高校生ならこんなものだろう。
やっと女の子と仲良くなれるチャンスだ。
ふふふ、女の子の体操服姿が見れるぞ。制服姿も見たことないけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます