第5話

僕は基本的に雨が降ったりしたとき以外は自転車通学である。

距離的には歩いていけなくもないのだが、やはり朝は一分でも多く寝たいためである。

一駅ちょい位の距離なので電車で通う生徒もいるみたいだが交通費がもったいないので天気が悪い日でも傘をさして歩いての通学だ。


今日もいつもの通学路を化〇語の二言目を鼻歌交じりに自転車を走らせている。硬派な男は恋愛サーキュレーションなど歌わないのだ。

阿良々木君のようにハーレムを掴みたいものだと、同じ田舎の高校生として思いを馳せているとと二人の人影が見えた。


一人はうちの制服を着ており、もう一人はご年配の女性のようだ。距離が近くなるにつれて会話が聞こえてくる。


「えっと、良ければ運びましょうか?」


「いいのかい?最近腰が悪くて重いものがもてなくてねぇ...」


「全然大丈夫ですよ!それでどこまではこべば、、、」


どうやらうちの生徒がおばあさんの荷物を運んであげようとしているようだ。確かにお年寄りが一人で運ぶにはなかなか大変な量にも見える。


「ンなっ......⁉」


そこで僕はとんでもないことに気づく。

なんとおばあさんの荷物を運ぼうとしている僕と同じ制服を着た生徒は美少女ではないか。お年寄りの荷物を運んであげる上に顔も良いだなんて、、、


うーん、でも登校時間までそんなに時間はないけどあのこ大丈夫なのかな?見たところ徒歩通学みたいだし。


「あの~もしよかったら僕がはこびましょうか?」


そう声をかけるとびっくりしたような顔で振り返る。

まあ、そりゃそうか。

誰だって急に話しかけられると驚くし、会話を聞かれていたらなおさらだ。


「えっと、君たぶん徒歩通学だよね?僕自転車通学だしおばあさんの荷物運んでからじゃ、もしかして学校に間に合わないんじゃないかなーって思ってさ。」


このおばあさんがどこに行きたいのかはわからないが、確実に時間はかかるだろうしもし学校と反対に向かうのなら歩きだったら間違いなく遅刻だろう。

いや決してこの子がかわいかったから良いところを見せようと思ったわけではなく。


「いいんですか?この人に声をかけたわけでもないのに...」


「いやいや困ったときはお互い様だよ。僕も一日一善を日頃から心掛けているからね。朝のうちに完了させられることができてお得だしね。」


我ながらなんとも嘘くさい。そもそも一日一善はそんな義務感でやるものでもないだ

ろう。善行は意識せずに行っているものだろう。この子のように。


「それじゃおばあさん行きましょうか。君も遅刻しないうちに行った方がいいよ。」


そういって、よっこいしょと自転車におばあさんの荷物を乗せる僕。ふむ、このくらいだったらさほど時間はかからなそうだ。


「ありがとうございます。すみません。本当は自分で声をかけたのにあなたに任せるようなことになっちゃって。」


そういって申し訳なさそうにしている。本当にいい子だなぁ。


「あっそうだ!多分あなたも許斐学園の生徒ですよね?良かったら名前を聞いてもいいですか?」


「榎本だよ。榎本佐倉。この春に入学した一年なんだ。」


「えっ!じゃあ同級生じゃないですか!自分は若園遥っていいます!」


なんと、どうやら同い年だったようだ。

というか、先輩じゃなくてよかった。思いっきりため口で話してたし。


顔をぱっと明るくして自己紹介をする。いいこだ。


「じゃあまた学校で会えるかもしれないね。」


「はい。その時はよろしくお願いします。榎本さん。」


それでは、と彼女はぺこりと一礼をして学校へ向かっていった。

あんな可愛くていい子がいるなんて、僕の高校生活も捨てたもんじゃないな。

また、会えるといいな......


「すみません、そろそろいいですかねェ...」


忘れてた。

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