第9話 迎え

 退院の日。

母さんと美咲が迎えに来てくれた。


「先生、今までお世話になりました。」

「翔君、元気でね。」


 別れの挨拶を済ます。これからは家の近くの病院に通院することになった。もう俺の病状は良くなったけど経過観察らしい。


 車に乗る。音楽が鳴っている。音はもう辛くない。

「それ、何の曲?」

「フラットっていうアイドルの曲だよ。」

「知らないなぁ。」

「最近、流行ってるんだよ。家にCDあるからお兄ちゃんに貸すよ。」

「へぇ。この曲、なんか癖になる良い曲だな。」


 家に着く。久しぶりの実家だ。

「ただいま。」

そう言うと

「お帰り。」

母さんと美咲が揃って返事をした。

「何が食べたい?」

母さんが俺に聞く。

「そうだなぁ。母さんの切り干し大根が食べたいなぁ。」

「そんなのでいいの?もっと豪華なものとか。」

「いいんだよ。俺は母さんの切り干し大根が好きなの。」

「じゃあ、私はケーキ作るね。お誕生日お祝いできてなかったし。」

「そりゃ、楽しみだな。」


 大切な人と囲む食卓。それは当たり前の時間のようでかけがえのない時間。

 俺はこの時間をこれからも大切にしていきたい。新しい俺なら今まで気づかなかった「当たり前」が大切だって気づけたから大丈夫。

 自分を信じてまた新しい道を進むんだ。

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余命宣告〜俺が死ぬまであと一ヶ月〜 @sonryu

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