第6話 面会

 家族と会うことになった。先生には辛い記憶も思い出すかもしれないからその話はなるべくしないようにと言われた。

 

 しょうは母親と、五つ離れた妹の三人家族らしい。父親が何でいないのかは別に聞かなかった。何となくずっと前からいない気がした。


 面会室に案内された。面会室には既に妹がいるらしい。

 扉を開ける。そこには涙を浮かべた妹の姿があった。

「お兄ちゃん。久しぶりって言ってもわかんないよね。会ってくれてありがとう。美咲だよ。」

 俺は反応に困っていた。知っているはずなのに記憶がない。記憶はないけれど心は覚えてる気がする。あの手紙に嬉しいって思ったから。

「手紙くれたよね。ありがとう。」

「ううん。お兄ちゃんとまだ面会できないっていうからこっそり手紙書いたの。読んでくれてよかった。」

「……。」

 沈黙が流れる。

「お母さんもね、本当は会いたがってるんだけど、その、申し訳なく思っているみたいで会わす顔がないと思っているの。だから…」

「わかってる。俺の記憶喪失と関係あるんだろ?」

 こくん、と妹が頷く。

「俺、先生にも言ったんだけど、例え辛い思い出があったとしても大切な存在を忘れたくないって思ったんだ。だからもしその辛い記憶が蘇ったとしても俺は乗り越える。」

「お兄ちゃん、ありがとう。」


 その後、俺は俺の昔話についてたくさん聞いた。知らない記憶だけど話を聞いていて楽しかった。


 それから毎日、妹は面会に来た。今日あった日常のこと、趣味のこと、好きな食べ物のことについて喋った。


「明日、雪が降るんだって。三月なのに珍しいよね。」

「そうか。」

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