決戦-2

セリは、影でカルディナだったそれを取り込んだ。




「うわっ、気色悪いんだよ!」



その瞬間、幾つもの火球、氷弾、雷撃がセリを襲う。



神盾イージス



セリは咄嗟に強力な結界を展開する。



凄まじい数の魔法が、結界に直撃する。




最高位の防御結界も魔法の弾幕により、徐々に亀裂が入る。



全能力向上オール・ブースト



セリはそ自身に強化魔法をかける。




結界もそう長くは持たないだろう。



無詠唱でこの弾幕量の魔法だ。他の魔道士には到底真似できない神業だ。


少なくともストレイル一人で一級魔道士、十人分の火力はあるだろう。



それにまだ本気は出していない筈だ。流石は神人としか言いようがない。





だが、神人であるのはセリも同じ。



そして、今のセリはカルディナの加護すらも使える存在になっている。




「消滅――」



セリが、ストレイルに手をかざす。



その瞬間――。




「うつっっ……ぐうっ!?」



ストレイルは激しく咳き込み、大量の血を吐き出す。




カルディナの加護――《消滅》。



対象の一部を消滅させる事ができる加護だ。



もう一つ、カルディナが使う事を拒み続けた"真の能力"もある。


これは、セリのみが生前のカルディナに教えて貰っていた。




「き、貴様……何故、カルディナの加護を使える!? ま、まさか……あの影で能力ごと死体を取り込んだのか?」



血を吐血してストレイルは苦しむ素振りを見せたが、すぐに平常を取り戻す。


内臓を幾つも消滅させたのだが、まるで何事も無かったかの様に振る舞う。




「まぁいい。カルディナの加護で俺は殺せない」



ストレイルの加護は《重複》。



詳細は誰にも明かされていないが、特定の条件を満たす事で不死になれる加護である。



しかし、それも完璧なものではない。



どうにか突破口がある筈だ。




「消滅――」



セリは今度は、ストレイルの四肢を欠損させる。



しかし、1秒も経たないうちに手足は再び生え揃った。




「無駄だ」



次の瞬間、結界が崩壊する。






結界が崩れると同時に、セリは炎の槍を投擲する。



ストレイルの胸元に、炎槍が突き刺さる。



しかし、その傷口も瞬きの合間に塞がってしまう。



それと交差する様に、魔法の嵐がセリを襲った。



赤、青、黄色、様々な属性を帯びた魔法の弾幕が降り注ぐ。



セリは咄嗟に影を纏いそれらを塞ごうとする。



だが、石弾などの突破力のあるものは影を貫通しセリの腹部や足に風穴を開けていく。



「いっ……回復ヒール!」




セリは定期的に回復魔法を使用して傷口を塞いでいく。

 


とは言え、体力的にも長くは持たない。




『あらら、このままではジリ貧ですよ』


「わ、わかってる……っ!」



このままではストレイルの無尽蔵の魔法攻撃の前に、押し潰されてしまう。



ならば、一か八かで"消滅の加護"の真価を使うしかない。



「消滅――」




セリは、消滅の加護のストッパーを意識内で破壊する。



イメージでは、加護の力を無差別に周囲に浸透させる感じだろうか。



勿論、この一撃によるデメリットは相当な筈だ――覚悟の内だ。



「やっぱり回復魔法使われるとしぶといなぁ……だったらこれで殺すか」



ストレイルがそう言うと、魔法の弾幕は一時的に収まる。



だが、代わりにストレイルの掌には巨大な白色の炎の塊が形成されていた。




「火系魔法最上位……獄炎インフェルノフレア。これを喰らって生きていた奴はいない!」



かつて、魔人族の軍勢数千を一撃で葬ったストレイルの極撃だ。


それをセリに放とうとしていた。



辺りにいる無数の民衆は死ぬだろう。


だが、馬鹿な奴等がいくら死のうとストレイルには関係ない。



その白色の炎を放とうとした時。


同時に、セリの"真なる消滅の加護"の効果が発動した。

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