VS冒険者-4
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「死んだか?」
ラグランは、セリの亡骸を剣先で突っつく。
「えぇ、頭と心臓が潰れています。間違いなく死んでる筈です」
「ならいいのだが……」
その時だ。
グリアが、セリの側に近寄った。
「死んでるとは思うが念の為だ。死体を吹き飛ばす」
セリに向けて手をかざし、爆裂系魔法を詠唱しようとした時だった。
漆黒の影が、グリアを瞬時に覆い尽くす。
「なっ……!?」
グリアは一瞬のうちに、影に飲み込まれてしまった。
「ま、まずいです……
リユスは、咄嗟に神聖魔法で影を無効にさせるがもう遅かった。
影が消え去ったそこに残っていたのは、僅かな血痕と宙を舞う布切れのみ。
そして、その背後には頭と心臓を潰されたはずのセリが立っていた。
潰れた頭も胸の傷も完全に修復されていたのだ。
「ま、まさか……お、おまえ!?」
その時ラグランは完全に理解した。セリが本当に人喰いの化け物であると言う事を。死なない本物の怪物である事を。
「
セリは取り込んだグリアの魔法を使用する。
リユスに向かって、火球を放った。
「
直前にリユスの土魔法で作り出された、岩の壁に火球は衝突する。
激しい爆発音と、火の粉が飛び散る。
セリはそのまま命を刈り取ろうと、壁の背後に隠れるリユスに駆け走る。
だが、その隙間にラグランが入り込んでくる。
「
ラグランは、自身の才能以上のポテンシャルを引き出せる魔法――
それにより本来は使えない
この剣技は一度に七度の剣撃を放つことができる。
つまり、両手に持った二つの剣から14回分の斬撃を放てるのだ。
「
だが、その斬撃の全てはセリを完全に覆う様に展開した結界の前に塞がれる。
「くそ!! グリアの最高位の防御魔法まで模倣したか!?」
神盾イージス――あらゆる防御系魔法の最高峰だ。
次の瞬間、ラグランを影が襲う。
「くそっ……よけれっ……!?」
ラグランは影から逃げようとするが、それ以上に影の動き早い。
「せ、
石の壁の背後に隠れていた為、リユスの神聖魔法は間に合わなかった。
影が消え去った後に残るのは、同じく血痕のみだった。
「二人目……」
セリはそう呟いた。
「よ、よくも!
リユスの放った岩弾が、セリに射出される。
しかし、結界の前に防がれる。
「
地面から、人の胴体程の太さの鋭利な石柱が何本も飛び出し、セリを貫こうとする。
しかし、同じように結界の前に無力化される。
「ひっ……ち、近づかないで!?」
セリはリユスの土魔法を無力化しながらも、一歩一歩リユスへと歩みを進める。
「
だが、今度はレットが攻撃を仕掛けてくる。
彼の剣は何度か発光する。魔法に対する抵抗力が極限まで向上する。
レットの振り下ろした剣は、鈍い衝突音を上げ、結界に裂け目を入れる。
「もう一撃で、結界を砕く……っ!?」
レットがもう一度、剣を振り下ろそうとした時だった。
「
セリの創り出した炎の槍が、腹部に刺さっていた。
「うぐっ……かはっ……!?」
セリはレットが固まったその瞬間に、剣を心臓に突き立てた。
「ぐっ……き、あ……」
レットは声にもならないような呻き声をあげ、その場に倒れ込む。
「三人目。後は貴方だけ……」
セリは、再びリユスに視点を合わせる。
勝てない事を確信したリユスは、セリが迫ってくる度に一歩、また一歩背後へ下がる。
「わ、私は悪くありません。私は信じてましたよ! そう、信じてました! 貴方のお母さ――」
今さら無理のある弁明をつらつらと喋るリユスの首を炎の槍が貫いた。
「うるさいよ。今更心にもない事をべらべらと」
「ぃっ、っ……!?」
炎の槍で喉を貫き、燃やされたリユスは、そのまま地面に倒れる。
暫く身体を小さく動かしていたが、やがて完全に動かなくなる。
『なんとか倒せたみたいですね』
戦闘が終わると、レヴィンが語りかけてくる。
『亡骸は取り込んでしまった方がいいでしょう。一応この方々は強い方みたいですし』
「勿論、言われなくてもそうするつもり」
セリは、周囲に影を這わせてレットとリユスを取り込む。
この先には、中央広場がある。
恐らく、そこにストレイルは居る筈だ。
セリは、広場の方へと歩みを進める。
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