VS冒険者

セリは、王都の中央道路を真っ直ぐに進んでいた。



辺りに人の姿は見えない。


本来は人で溢れ帰っているメインストリートであるはずなのだが、騒ぎを聞きつけて逃げたか避難勧告でも出ているのだろう。




しかし、壁の前で相対した兵士達は呆気なく全滅させてしまった。


辺りに影を這わせるだけで、何の被害も被る事なく殲滅できた。




この通りを真っ直ぐ進めば、中央広場がある。



目指す場所はもう直ぐだ。






『なにやら、また王国兵達がたむろってるみたいですね』



正面の方を見ると道を塞ぐ様に兵士達が陣形を組んでいた。



あの兵士達が道を塞ぐ先が、中央広場だった筈だ。



『どうしますか?』


「全員蹴散らす」



そう言い放った瞬間、セリの姿を視認した途端に数騎の騎馬兵が槍を構えて、突進してくる。




「あの悪魔を殺せ!!」


「裏切り者の魔女の関係者だ。容赦はするな!!」



騎馬兵達は何やら喚いていたが、知ったことではない。




セリにたどり着くずっと前に、影が騎馬兵を飲み込んだ。



随分と影の移動速度も早くなったものだ。


もはや自分の体以上に自由に動かせるレベルだ。



「ううっ!!!?」


「な、なんだこっ……!?」



影が喰らう速度もかなり上がっており、断末魔を微かに上げる程度の猶予しか与えない。




唖然としている後方の兵士達に影を這わせる。




「てっ、撤退、撤退!」



陰に怯えた兵士達は、その隊長らしき人物が指示すると崩れ去る様に逃走する。



だが、人の走る速度よりも影の方が数段と速い。



逃げる兵士を背中から何人も捕らえては、闇の中に放り込んでいく。





圧倒だ。


何十、何百という訓練された兵士が抵抗する術もなく飲み込まれていく。


この加護さえあれば、他の神人も敵では無い――そう思えてしまうほどだ。



「そこまでだ!」



セリの眼前に剣は振り下ろされる。



「くっ……!」



セリはそれを、咄嗟に剣で斬撃防いだ。



その斬撃を繰り出した張本人は、黒髪の男だった。



速い。


どこから現れて、どう距離を詰めてきたのか分からない。



セリは、反射神経は全く良い方ではなかったはずだ。



しかしアサラトを取り込んだことにより、身体能力が飛躍的に向上していた。




火級ファイアーボール!」



その瞬間、背後から火炎の塊が一直線に飛んでくる。



それと同時に男はバックステップで距離を空ける。




セリは、咄嗟に影を自分を包み込ませる様に展開させる。



影の内側まで熱気が伝わってくる。


しかし炎は通さない。どうやら、防御にもしっかり使えるようだ。



暫くして、熱気が収まる。


セリは影を消して外の様子を伺う。



そこにいたのは、男女四人の姿だった。



『あの方々は一体?』



セリは彼らに見覚えがあった。



王都を根城に活動する一級冒険者チーム"白銀の刃"の面々だ。

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