王都侵攻
セリは、王都の目の前まで来ていた。
王都は高い防壁に囲まれ、周囲は視界を確保する為、森が切り開かれている。
王都の壁前には、その周辺を埋め尽くす兵士達の姿があった。
恐らくは、2000人程はいるだろう。
『結構な数が居ますね』
セリは、その軍勢を離れた位置にある木の背後から見ていた。
『それでどうやって中に入るつもりですか?』
「そんなの決まってる。私を邪魔する奴は全員蹴散らす」
セリは、そう言うと木の背後から飛び出す。
「
自身にバフ魔法をかけたセリは、黒影を纏って王国軍に突撃する。
『そうです! そうでなければ、面白くありませんね!』
レヴィンは明らかに興奮した声色でそう言った。
恐らく、この状況を一番楽しんでいるのは彼女だろう。
✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
王都の中央広場には、ひしめき合う王都の住民達の姿があった。
その中心には、焼け焦げたカルディナだったものと、ストレイルが居る。
"英雄になりすました悪しき魔女"の処刑に歓喜し、真なる英雄に賞賛の声を送っていた。
「悪しき魔女を討たれた。だが安心すると良い、もう2度と俺達――俺がこの様な邪悪を許さない!」
ストレイルがそう言うと、より一層歓声は大きくなった。
ストレイルは、その全能感に酔いしれる。
まるで自分が、全てを操っている気分に浸る。
魔人族と内通し、密かに虐殺を行い。挙句の果てに攫った住人達に快楽的に拷問を加え、人類を陥れた魔女。
と言うのは、全てでっち上げだ。
他の神人達と共謀して、吹聴してやったら、住民達はこの有様だ。
今まで散々救ってくれた恩人を、悪魔や魔女だと罵り出したのだ。滑稽にも程がある。
そもそも、カルディナもあの弟子のクソガキも気に食わないやつだった。無様に死んでくれて精々する。
「ストレイル様、ご報告がっ!」
周辺を警備していた一人の兵士がストレイルの元に駆けつけてくる。
「なんだ? 一体どうした?」
「カルディナの弟子が、王都に向けて迫ってきています!」
「は? セリか? 奴は俺が殺したはずだ」
「そ、それが……生きているんです、生きてこっちに向かってきています!」
それを聞いたストレイルはいくつもの疑問が頭の中に浮かぶ。
「兵士達は何をしている? あんな雑魚すぐに殺せるだろ」
セリは確かに魔道士であったが、良くて二流程度だ。集団でかかれば倒せない敵ではない。
「それが……影の様なものを纏っており、手も足も出ない状況の様です」
「影……何言ってんだ?」
ストレイルは話を全く理解できなかった。
影を纏うなど聞いたこともない。少なくとも元素魔法ではないのは確定だ。
それ以外にも死霊魔法や神聖魔法があるが、人間には使えない魔法だ。
ならば、死後にアンデットにでも転生したと考えるのが最も可能性は高いだろう。
「死体を灰になるまで焼いておけば良かったな。カルディナの様に……」
加護持ちのカルディナは、どの様に復活するかわからない。
本人ですら、自覚していない加護の隠れた効果が発動して、より強力な存在に昇格する可能性すらあるのだ。
その弟子ですら、同じ様にしておくべきだった。
「まぁいい、次は消し炭にしてやるよ」
だが、ストレイルはどんな敵であろうと負ける気はしない。
ストレイルが与えられた不死不滅となる加護がある限り、決して負ける事は無いのだ。
それが同格の加護持ちであろうと。
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