2日目上

「んー……」


暖かな光が顔にかかり目が覚める。朝だー。……朝?あれ、昨日は確かシルファちゃんが私の部屋に来て、髪をすいてくれて、それからは?


 もしかして寝落ちしちゃってた!?横から暖かさを感じる。シルファちゃんだ。私の横原にコアラのように抱きつくシルファちゃん。


 ど、同衾!?昨日のことを思い出して、そんな単語を思いついてしまう。いや、女の子同士だし添い寝くらい普通か。普通だね。


 それにしても、寝顔も可愛いなシルファちゃん。まつ毛なが。いい夢でもみているのか、笑みを湛えながら私に頬ずりしてきた。うーん反則級に可愛いな。こんな子に告白されたのか私。


 でも、「いいわ。異世界から帰るまでにあなたが好きだと思わせてみなさい!」はやっちゃったな。一体今日からどんなことに巻き込まれるんだろう。


「むー……」


 あれ、起こしちゃったかな。眠気まなこをゴシゴシ擦りながらムクっと上体を起こすシルファちゃん。あ、こっち向いた。


「は!おはようございまふ、佳織。昨夜はよく寝られまひたか?」


「おはよう、シルファちゃん。お陰様でよく眠れたわよ。このベットふかふかなのね」


 朝の挨拶を済ましてベットから降りる。すると、扉を叩く乾いた音が聞こえてきた。


「おはようございます。お嬢様。佳織様。朝ごはんの用意が整いましたよ」


 ニアさんだ。そっか。朝ごはん自分で作らなくていいんだ。


「分かったわ。すぐ行く」


 シルファちゃんが顔を洗いながら返事をする。


「服はそのままでいいわ。さあ、行きましょう」


 シルファちゃんに手を引かれてダイニングに連れられた。相変わらず広い。天井高!オシャンなシャンデリアまであるし。


「おはようございます。私はメアと申します、佳織様」

ニアさんに似たメイドさんが出迎えてくれた。姉妹かな?「さ、座ってちょうだい」


ナチュラルに隣の席を叩くシルファちゃん。こんだけでかいテーブルなんだから、もっと広く使ってもいいんじゃ。


「どうぞお座りください、佳織様」


メアさんまで後押ししてきては断れない。私は素直にシルファちゃんの隣に座った。


「むふふ。今日の朝食は特製ホットケーキよ!佳織の異世界来訪記念ね」


 あまり喜べない記念ね……でも、給仕されたホットケーキを一口いただいてそんな雑念は吹き飛んだ。


「美味しい!」


 市販のホットケーキミックスじゃ出せないもちもちふわふわ。メープルシロップと生地本来の甘さが絶妙に混ざり合ってやみつきになる。


「そうでしょ。このシロップはうちの名物なの」


 うんうんと頷いて黙々と食べ進める。あっという間に完食し食後のコーヒーを嗜む。これまた不思議な味だ。やや酸っぱくて大人な味なのに、後味は嫌味のないさっぱりとした苦味と旨みを感じる。


「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」


「お粗末さまです。してお二人とも、今日はどのようなご予定で?」


 今日何するかか。特に決まってないな。


「今日はあたしが佳織を街に案内するわ」


 まさかデー……いや考えすぎか。


「いいですよね、佳織?」


「喜んで」


 大きく首を縦に振ってアピールする。


「でしたら馬車を手配しておきますね」


「じゃあ早速準備しましょう。佳織に見せたいものがあるから」


 といっても出かけるための服がないわね。制服は洗われてしまったし。昨夜はネグリジェを借りたけど、そのね。胸周りが少し苦しくて。私はシルファにそのことを相談した。


「でしたら、ニアのものをお貸ししましょう。彼女のものなら佳織様もお召しになれるかと」


 メアさんが提案してくれる。


「ありがとうございます」


 なんだかこそばゆくなって、誤魔化す様にはにかんでお礼を述べるのだった。


 自室に戻って黙々と準備を進めること少々。準備を終え、玄関に移動したがシルファちゃんはまだ来ていない。


 すると、シルファちゃんはやや小走りになって近づいてきた。


「申し訳ありません。遅れました」


 前から思ったがシルファちゃん、敬語とタメ口が混ざった話し方をするよね。タメ口の時は元気溌剌な感じで敬語の時は淑女然としている。そのギャップにグッとくるわ。


「大丈夫。今来たとこだよ」


「……かわいい」


 そう呟いたシルファちゃんは、私を舐め回すかの様に凝視したまま微動だにしない。今日の借り物コーデは白のブロードシャツにボリューム感のある茶色のAラインスカート。シンプルながら素材の良さが出ちゃうコーデだ。ニアさんのファッションセンスの良さが出てるわね。


「ありがとう。シルファちゃんもとっても素敵よ」


 対するシルファちゃんはというと、胸元に青い宝石のあしらわれた白のワンピースに紺色のカーディガンを羽織ったお淑やかな感じ。横に止められた青のブローチが白髪によく映えている。


「そ、そうかしら。嬉しいわ」


「ゴホンっ。今日はあたしが佳織様をリードして差し上げましすわ!さあ、行きましょう」


 右手を差し出してエスコートしてくる。


「よろしくお願いしますね」


 差し出されたシルファちゃんの手に自分の手をそっと乗せる。一体どんなところに連れていってくれるのかな。


_______________________

あとがき


ここまでお読みいただきありがとうございます。


面白かった! 続きが気になる! という方は⭐︎や♡、ブクマをしていただけると嬉しいです。


今後ともよろしくお願いします!

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