1日目上

 何故か異世界に飛ばされ、牢屋に閉じ込められて絶体絶命。そしたら突然白髪ロリ美少女(私の好みどストライク)が現れて、私に救いの手を差し伸べてくれた。感情がジェットコースター並みに乱高下するわ、そのシルファちゃんが突然手を繋いできて距離感バグっているわで大変だった。


 それからの私といえば、馬車に揺られてシルファちゃんの家に連れられた。馬車の道中、正面に座ったシルファに私の来歴を根掘り葉掘り聞かれた。


 しかし、小学校高学年から中学までボッチを貫いてきた私には特に筆舌するような面白い話はない。そんなつまらない話を聞かされても嫌な顔ひとつせず、むしろ興味津々な様子のシルファちゃんに癒しパワーをもらった私には、慣れない馬車旅など苦ではなかったのだ。


……途中酔って吐きそうになったことはここだけの話よ。


 そんなこんなで着きましたシルファ家!いや〜デカい。馬車の中でシルファちゃんがここら一帯を収める領主の娘だと聞かされたが、この屋敷を見たら納得だ。


 まず、門からして格が違う。花柄があしらわれた巨大な門が私たちを迎える。続いて目についたのは広い庭。噴水やその周りの花壇は漫画の中で見たやつみたいだ。


 やがて馬車が止まり、シルファちゃんに続いて降りるとメイドさんが出迎えてくれた。メイドさんですよメイドさん!おまけにやり手そうな執事のおじ様まで後ろに控えています。


 ここまで嫌というほど非日常を見せられたけど、今はそれ以上にテンションが上がっています。だって、目の前にあらせられるのは正真正銘のお嬢様!舞い上がった内なる私が顔に出ていたのか、メイドたちが怪訝そうな顔で見てきたので一旦心を落ち着つかせる。


「おかえりなさいませ。シルファ様。して、そちらの者は?」

 

 メイドの一人が深々と頭を下げてシルファちゃんに話しかける。


「シラセカオリよ。コウコウニネンセイ?だそうよ」


「……失礼ですがシラセカオリ様。一体どのようなご身分で?」


「えっと〜非常に言い表しにくいのですが、どうも私異世界転移したらしくて……」


「まあ、それはなんと……確かに今日は満月ですね」


 メイドさんは一瞬驚いて見せたがすぐに平静を取り戻した。


「あの、先ほどから気になっていたのですが、私がこの世界に来たことと今日が満月なことに何か関係があるのですか?」


「それはあたしから説明するわ」


 話に割って入ってきたシルファちゃんが説明を始める。


「端的に言えば、この世界と貴方がいた世界で同時に満月が出ていると、稀に2つの世界が繋がるの。それが今日だったってわけ」


 なるほど。つまり私は超低確率の豪華異世界旅行券を引き当てた超絶運が悪い子ってわけね。


「帰る方法とかあるんですか?」


「もちろんあるわ。2つの世界は1ヶ月周期で同時に満月が現れるらしくて、2ヶ月周期で同じ場所にワープホールが開くの。つまり、来月あなたがいた場所に帰り道が開けるはずだわ」


「そうなのですね。少し安心しました」


 来月には元の世界に帰れそうでホッとする。


「後の話は屋敷の中でゆっくりしましょう。どうぞ、シラセカオリ様も中にお入りください」


「佳織でいいですよ」


「分かりました。佳織様」


 ありがたく中に入らせていただくとしよう。それにしても緊張するな。私が元住んでいたのは6畳一間のボロアパート。


 両親を小学生の頃に事故で亡くして以来、親戚の家を転々とし、高校生になって1人暮らしデビューした私にはこんな立派な建物に入る機会はそうそうない。私は背筋を伸ばしおずおずといった様子で屋敷の中に入るのだった。



___________

あとがき


引き続きお読みいただきありがとうございます!


楽しかった! 続きが気になる! という方は是非⭐︎⭐︎⭐︎や♡、ブクマをしてくださると嬉しいです!皆さんの応援が執筆の励みになります。今後ともよろしくお願いします。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る