そんなお見合い

みこ

そんなお見合い

 とりあえず、会うだけ会ってみて、なんて言われたけど……。


「…………」


 沈黙が、二人の間を流れた。


 なつ子は、お見合い相手と対峙しているところだ。

 気軽なお見合いという事で、両親も付いてきてくれず、二人きり。


 お見合い、と言っても、お父さんも上司からのお願いを断れなかっただけで、会うだけ会えばあとは本人の気持ちを優先、なんて言っていた。白石さん?も、なんだかとても歳上のようだし?

 服装も、ちょっとおしゃれではあるものの、普段着とそう変わりないものだし。


 全然、なんてことない。


 まあ、もし大金持ちで、すっっっごく気に入られたら、遺産目当てで結婚してもいいかしら♪


 なんて……、気軽に思っていたのに。


 えっ……ちょっと待って。何これ。この人!えっ……、すっごい好みなんですけど!!??


「お見合いって……何すればいいのかな」

 人もまばらなホテルのラウンジに、目の前の彼の声が響く。

 ぎゃああああああ!声!渋……!最高に好みじゃないですか!!!!!


 ハッキリ言って、普通に同じ顔ばかりと顔付き合わせてする仕事は、特に出会いというものは無い。

 確かに、10以上?歳上のようで、もうおじさまって感じの年齢だけれど。

 まさか私がこんな歳上趣味だったなんて。今の今まで気が付かなかった。

 それとも……、この人だから???


 想定の年齢よりも落ち着いた雰囲気。響く声。


 す、すぐにお別れなんて事にならないようにしなきゃ。


「コーヒー飲んでお別れっていうのも、お父さん困っちゃうのかな……。えっと、白石さんは、お腹って空かないですか?」

 おずおずと申し出てみると、

「ああ、そういえば。緊張して何も食べてなかったから」

 と、微笑んでくれた。


 気遣いの笑顔!素敵!!!!

 そして、なんともなさそうな顔して緊張してたって!?


「移動しましょうか」

 提案する声もいい!控えめ!

「はい」

「お酒は飲める?」

「あ、いいえ、あんまり」

 実際、なつ子はあまりお酒が飲める方ではない。職場も飲み会なんてほとんどないし。

「じゃあ、ホテルのバーはなし、かな」

「あ、でも、気楽なところなら、少しお酒があった方が、話しやすいかもです」

「いいね」


 立ち上がると、背が高いことがわかる。

 なつ子も小さい方では無いけれど、それでも見上げなければならないほど、白石さんは背が高い。

 ちょっと……ドキドキしちゃうじゃない?


「この近くに、オススメの居酒屋あるんだけど、どう?」

「いいですね」


 行ってみると、思ったよりは高級で、それでいてホテルのバーよりは気楽そうなお店だった。


 素敵なお店……。

 気楽そうなのにオシャレだし。

 もしかして……、白石さんも私と話してもいいかなって思ってくれた、とか?


 向かい合わせで座る。

 さっきのホテルのラウンジより距離が近い……。


「なつ子さんは、お酒、飲む?」

 名前ぇぇぇぇぇぇ!

「あ、はい。少しだけ」

「じゃあ、まずはビールでいいかな」

「はい!」


 それから白石さんは、申し訳なさそうに、

「なつ子さんは、まだ若いよね。20代、か。こんなおじさん相手じゃ困るよね」

 とまさに困り眉を見せる。

 その顔魅力的ですね?


「いえ、私……、全然……っ」

 正直、見てるだけで幸せですからね。

 どうやったら、この人の事をもっと知れるんだろう。

 どうしたら、この関係を維持できる?


 何か、面白い事言わなきゃ。


 えっと……。


 えっと……!


「と、トリあえず、ヤキトリなんてどうですか!?トリ、あえず……、ヤキ……トリ……」


 あ……っ……外した???


「ふっ……、ははっ!」


 けど、笑ってくれた……!

 あ〜〜〜〜〜〜〜〜!

 今日一素敵な笑顔!!ありがとうございます!!!


 けどやっぱり……、穴があったら入りたい!!

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