8.安息
「まぁ……手短に言うとね、世界線が近いからだよ」
私にグラス一杯の水を用意してくれながら、さらりと彼女は答えた。
「つまり、どういうことですか」
「私の転移魔術は発展途上だからね。なにかと近しい世界からしか呼び寄せられないんだよ、だから言語も通じるわけだね」
「あ〜……はい、なるほど?」
「ま、詳しいことはともかく。そういうことだと思ってくれたまえ」
ミェルさんの口ぶりから、詳細を聞いたところで魔術素人の私では理解できない深いなにかがあると感じとれる。
「なに、我々は目的は同じでこうして言葉も通じるわけだし……いいじゃないかそれで」
「いや、あなたのせいで目的が一緒になったんですけど。なにもよくないですよ」
「……ご馳走さま」
この魔女、立場が悪くなるとすぐはぐらかすな。
「ご馳走さまでした」
不服だったが、これ以上続けてもしょうがないのでミェルさんに続いて食べ終え、食器を水につける。
状況も固まり、やや環境に慣れてきたこともあって私の心根はやや穏やかになってきた。
人の適応能力というのにはほとほと感心する。
「ふわぁぁ……食後はいつも眠くなるんだよなぁ……」
すっかりだらけきってソファに寝そべるミェルさん。
こうして見ると、憎らしいが改めて彼女の美貌に目が惹かれる。
スタイルも抜群に良いし、羨ましいくらい出るところが出てる。全体的に色白で、少し弄ればそれこそ絵本から抜け出したお姫様みたいに……。
「おっと。……失礼」
――えっ!??
「ミェルさんっ!???」
先程までだらけきっていたミェルさんが、なんの前触れもなく飛び起きて私を抱き締め、そのまま床へと押し倒す。
「まってミェルさん!いきなり何を」
言いかけたその言葉を遮るように、窓ガラスの破砕音と男の人達の怒号が響き渡った。
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