4.「Trial and Errorの精神でGO」

 今さらながら、当時――有村教室時代――の私がどのような碁を打っていたかお話していませんでした。

 何しろ二十年前のことですので、今となっては記憶も非常におぼろげではありますが、少なくとも、当時は変則的な布石はいっさい打っていませんでした。普通に空き隅から打ち始める常識人でしたね。

 もともと地に辛い棋風のため、星よりも小目を好んで実利志向の碁を打っていたように思います。


 ただ、教室は一級差一子のハンデ戦でしたので、級位が上がるにつれて置碁で白を持つことも増えてきました。置碁の場合は棋風云々よりも全体の打ち回しの巧拙こうせつや総合力が問われると思います。五子や六子などかなり多めに置かせる対局もあり、それなりに歯ごたえを感じていました。

 前話で、棋書による学習も行っていたと書きましたが、三・四級ぐらいからは置碁対策として“ハメ手”の勉強なども取り入れるようになりました。このレベルでハメ手に手を出してみるという人は、そこまで多くないのではないでしょうか。尤も、三・四級程度では高度なハメ手は扱えませんので、日本棋院出版の『ハメ手小事典』をぱらぱらとめくって使いやすそうなものを試す、という程度でした。


 今でも憶えている碁があります。


 https://24621.mitemin.net/i829238/

 教室内のリーグ戦の一局で、私の白番です。

 白5のツケが有名なハメ手で、事前に勉強して実践しました。

 ハメ手としてはわかりやすい部類であり、受ける側はハマっても軽傷で済みますが、仕掛ける側は扱いやすいという利点があります。


 https://24621.mitemin.net/i829248/

 実戦は右図のような進行になりましたが、これは白4まで、白は好形で少なからぬ実利を得ており白満足(黒不満)です。

 左図黒3と遮るのも考えられますが、例えば白10までの進行になったとしても、白は隅を先手で生き、辺のほうも伸び伸びした形であるのに対し、黒は凝り形を余儀なくされ、黒が良くありません。


 https://24621.mitemin.net/i829246/

 黒の対策は至ってシンプルで、最初のツケに相手をせず黒1と膨らむのが好手です。

 白は2で三々に打つのと辺のほうにノビるのと二通りありますが、いずれも黒が厚く不満ない進行です。

 

 碁の解説はこのくらいにして、閑話休題。

 常識人面して(?)まともな打ち方をしていた級位者時代も、毎度毎度同じ布石や定石ばかり打つというのではなく、このように変化球を交えながらそれなりに意欲的な打ち方をしていました。


 Twitterを見ていると、布石を固定させてそればかり練習するという方もわりといるようです。私は、でも打ち方を極端に固定化させずにいろいろな手を試したほうが上達しやすいのではないかと思います。

 もちろん、その人の棋力や向いている勉強法などによりますので一概に善悪をつけることはできませんが、少なくとも基礎が充分に身についていないと思われる級や低段のうちから同じ打ち方ばかりしていては、不慣れな局面に遭遇した時に臨機応変な対応ができないでしょう。

 下手に難しい手を打つ必要はありませんが、失敗を重ねることが良質な打ち方の習得に繋がるので――もちろん、失敗ののちに何かしらの振り返りは必要です――、皆さんも失敗を恐れずにいろいろな打ち方に挑戦してみてはいかがでしょうか。


 ジュニア囲碁スクールの初段に到達するまで、これといったスランプや伸び悩む時期はなく順調に上達できた実感があります。前述したハメ手しかり、失敗を恐れずに様々な打ち方にチャレンジしてきたことが功を奏したのかもしれません。

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