第45話 第2支部とは規模が違うね
「玲子さん、それってどういう? 」
久後さんが第2支部を作った理由?
それと2人の同期が関係している?
一体彼らに何があったって言うんだ?
「あ、ごめん。ちょっと喋りすぎだね。大丈夫、気にしないで。あなたには関係のないことだから 」
もしかしてニューロヴォアが関わっているのか?
ここは一か八か話題に出して……いや、彼女が冒険者側の人間か分からない以上リスクが高すぎる。
しかし何か問題を抱えているのは間違いない。
どうするべきか。
「戸波さん! そろそろ移動しますか? 」
気づけばヨウスケが俺の隣にいた。
色々考えていて気づかなかったな。
「ほらっ! そんな暗い顔しないで。今日から1ヶ月研修があるんだから楽しんでよ〜! 」
バシッ――
そう言って玲子さんは俺の背中を叩いてきた。
それもそうか。
今日から1ヶ月もあるのだ。
何もすぐに解決しないといけない問題ではない。
今は研修に集中しよう。
「そうですねっ! 俺、研修楽しみたいです! 」
「お〜研修を楽しむって言えるなんてさすが『冒険者キラー』様だ 」
「その冒険者キラーってなんなんですか? 」
「それはそこの2人の方が詳しいんじゃないかな? 」
彼女はヨウスケ、ヒナを見てそう答える。
「「えっ!? 」」
彼らは驚いたような声を出した。
そして俺と一向に目を合わせようとしない。
なんだ、その罰の悪そうな反応は。
「じゃあ私はここで! ヨウスケ君、ヒナさん、戸波くんのことよろしくね 」
玲子さんは2人の返事を聞く暇なく、魔法陣へと向かっていった。
「で? 『冒険者キラー』ってなに? 」
どうやら玲子さんより2人の方が詳しいらしい。
ここで1ヶ月もいるのだ。
自分のあだ名の由来くらいは知っておかないと居りづらい。
「え、えっと……戸波さん、行きながら話しませんか? 」
ヨウスケは不自然な笑顔を向けながら、両手を擦り合わせている。
俺の機嫌を取ろうとしてんのか?
まぁ歩きながら話を聞いてやろうじゃねぇか。
◇
俺はヨウスケとヒナに社内案内してもらいながら、話の続きをしている。
「……ってわけでして。決して悪気があったわけではないんですよ〜 」
「戸波さんっ! ヨウスケを許してあげて~ 」
両側から腕をグイグイと引っ張られながら何かを説得されている。
俺、別に怒ってはないんだけどな。
彼らの話を聞くに大型ダンジョンの一件を冒険者仲間に聞かれたとき俺がB級冒険者2人を倒したと伝えると、E級が倒せたということは冒険者に対する何かしらの得策があるんだという話になって、どこのどいつかが『冒険者キラー』だーっ!! と騒ぎ始めたのがキッカケらしい。
あながち間違ってないからなんとも反論しづらいな。
「大丈夫、別に怒ってないよ。それよりここどこなんだ? 」
話に夢中で、あんまり社内を案内してもらってない気がする。
おかげで今ここがどこなのかさっぱりだ。
「あぁごめんなさいっ! すっかり案内を忘れてましたっ! ここは冒険者のオフィスってところですかね 」
「へぇ、広いなぁ 」
オフィスか。
たしかにここには多くの冒険者が集まっており、皆デスクで書類を見たりスマホやパソコンを操作している。
そのデスクだって1人で使えるものや4人以上でも使えそうな広いものなど多種多様だ。
「戸波さん、第2支部はどんな感じなの? 」
ヒナが興味津々と言った様子で俺を見つめてくる。
そんな目で見てきても彼女の期待しているものとはかなり違うだろう。
「いや、あの机が一つ置いてあるくらいかな 」
俺が指差したのは、4人の冒険者が一つの大きなテーブルを囲んでいる場所。
第2支部に置いてあるデスクは1人用が4つ。
まさに足してもあのテーブルくらいの大きさだろう。
そう考えると、本部との差に少し泣けてきそうになる。
「あ……そうなんだ 」
ヒナは明らかにテンションが下がっている。
そんな期待と違うかった!?
なんかごめんね!
「おーヨウスケ君、ちょうどいいところに! 来週開催する武闘大会出るだろ? もう最後になるんだし 」
ちょうど俺が指差したテーブルに座っていた青年から呼びかけられた。
「あぁ、そうだね。今回は出ようかな 」
「オッケー! じゃあ参加って書いとくわ 」
「武闘大会? 」
俺が質問すると、
「あ、3ヶ月に1回開催する催し的なものですよ。俺はそんなにストイックでもないし、積極的に出たいわけではないんですけど、今月で冒険者を辞めるので記念に出とこうかなって 」
「そういえば結婚するからってダンジョンのとき言ってたもんな! てことはヒナさんも? 」
「うん、そう。2人で辞めるんだ。でも安心して? このレベルアップコーポレーションにはいるからさ 」
「え!? どういうこと!? 」
「俺は来月からレガシー管理課、ヒナは広告デザイン課に配属になるんですよ。つまり会社は一緒ですっ! 」
どうやら2人はまだこの会社にいるようだ。
よかった、せっかく仲良くなったのに別れるなんて嫌だからな。
「戸波さん、安心した顔してる〜! 私達と離れるのそんなに寂しかったんだねっ 」
「そういう言い方されたら急に冷めたわ〜。せっかく今日は紗夜さんも呼んであの時の祝勝会しようと思ったんだけどなぁ 」
目には目を、歯には歯を、イジワルにはイジワルをだ。
「「え〜!! 」」
2人は落胆した様子で、力の抜けた声を発している。
思ったより俺の言葉は効果的だったようだ。
ということで紗夜さんに許可が取れたということで今日の仕事終わりは駅前の居酒屋に集合となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます