第23話 ネクサリウスってなに??
俺が1番気になること。
それはネクサリウス。
その単語はちょくちょく耳に入っていた。
初めはどっか知らない外国だとか思っていたが、どうもその線は違うらしい。
あれからスマホで調べてみたが、この地球にそんな国は存在しなかったのだ。
つまり可能性としては今のところ3つほど浮かぶ。
ひとつ、地球上の未だ開拓されていない土地。
ふたつ、地球外……つまり宇宙。
みっつ、世界が違う……いわゆる異世界というやつ。
まぁ3つ目は極めて有り得ない選択肢だが、夢とロマンは詰まってそうだな。
まぁ……1番可能性低そうだけど。
そんな俺の質問に対して、瑠璃は戸惑いもなく口を開く。
「あぁ、それも説明しようと思ってたんです。ネクサリウス……それはこの世界と別の場所、つまり異世界といえば分かりやすいですかね? 」
期待以上の裏切りだ――っ!
思ってもみなかった答えが故に気持ちを昂らせる。
これは高校のクラスメイトに学校一の美少女がいて、その子がたまたま現役モデルをしてして、たまたま隣の席で、友達と賭けで決めた罰ゲームで告白して成功しちゃうくらいの裏切りだっ!
可能性のひとつとして考えてはいたが、そのくらい想定ができなかった。
「ま、ま、マジで!? 」
「ちょっと先輩ビックリしすぎ。面白い顔してますよ? 」
「いや、だってそんなのマンガの中だけだと…… 」
「冒険者としてダンジョン攻略してる人が今更そんなこと言わないでくださいよっ! 」
そう言って瑠璃はクスクスと笑っている。
まぁ確かにそれもそうか。
ダンジョンや冒険者があって異世界だけは信じられないなんて今更の話だ。
「それで瑠璃、そのネクサリウスってどこにあるんだ? 」
「えっと、アイリーンと会いましたよね? あそこはネクサリウスのダンジョンなんです。つまり私がお渡ししたあのメガネをかけて視えたはずの転移魔法陣、あの先がネクサリウということですね! 」
なんとっ!
知らず知らずに俺はもうネクサリウスへとお邪魔していたらしい。
そしてアイリーン、あの魔法少女……いや冒険者にはお世話になった。
次会った時はぜひ改めてお礼をしたいものだ。
「てことはまたアイリーンに会えるわけだな 」
ピキッ――
彼女からそんな音がした。
そんなマンガじゃあるまいし有り得ないのだが。
「へ、へぇ〜そんなに仲良くなったんだ? 」
瑠璃は引き攣ったような笑みを浮かべている。
あれ? もしかしてアイリーンと仲が悪いのか?
いや、でも彼女は瑠璃に頼まれて冒険者のことを俺に教えてくれたって。
ってことはそういうことでもない?
いやいや……今はとりあえず謝らねばっ!
「ご、ごめんな? 」
「理由も分からないのに謝らないでくださいっ! 」
瑠璃は頬を赤くしてむくれている。
久しぶりに怒った顔を見た、可愛いな。
……じゃなくて理由も分からず謝るのは確かに良くない。
俺の悪いクセでもある。
「そ、それはごめん 」
「あっ! また謝ってます〜! 」
ダメだっ!
これじゃずっと謝っちゃうっ!
長年、このループの抜け出し方が分からないのだ。
「ま、いいです。話の続きっ! しても? 」
あ、話の途中だったんだ。
「はい、頼んますっ! 」
「で、そのネクサリウスってのはここで言う異世界。そこではね、この地球とは違って当たり前にダンジョンがあって、冒険者はそこで素材集めしたり鉱石なんかを取りに行ったりしていたんです…… 」
急に瑠璃の表情が曇り始めた。
それにまるで過去の話をしているような口ぶりも気になる。
「していたってのは? 」
「つまり今はもうしてない。そのままの意味です…… 」
「それは……なんで? 」
この重苦しい空気の中、俺はやっとの思いで質問を投げかけた。
「ニューロヴォア…… 」
彼女は一言だけ発した。
アイリーンから聞いたその名前。
ヤツは高レベル冒険者の脳を喰べる。
その言葉から導き出されるのは最悪の答えだ……。
「つまりネクサリウスの冒険者は…… 」
この後の言葉は怖くて口に出せなかった。
「ええ、みんなニューロヴォアの餌食になったんです。レベル30以下の冒険者を除いて 」
「そうなのか……。ということはまだ生きている冒険者もいるんだな 」
「当時の冒険者は生きています。だけど、もうみんな引退しました。そりゃ冒険者やってる限り、いつニューロヴォアが襲ってくるか分からないですから 」
彼女はそのまま話を続ける。
「そして冒険者のいなくなったネクサリウスに興味はないと言わんばかりにニューロヴォアは姿を消しました。次の獲物をいる世界を探しに行ったんです、そう、それが地球でした……。元々ダンジョンと地球が繋がっていたのか、ヤツが意図的に繋げたのかまでは分かりませんが 」
「そうだったのか、こんな苦しい話させて悪かったな…… 」
「いいえ、あなたにはいずれ話さないとって思ってましたから 」
「………… 」
「………… 」
どうしよう、話が壮大すぎて頭いっぱいだ。
それにこの重たい話を聞いてなんと声をかければ良いかも分からない。
これ以上質問するのもなんか心苦しいし……。
うーん、どうしたものか。
「先輩っ! 」
彼女は俺の想像と違った明るい声で呼称してきた。
「どうした? 」
「あなたの故郷、ネクサリウス……行ってみたいですか? 」
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